あがり症体験談 恥をかきたくない、ヘンな人と思われるのが怖い、緊張すると、もうどうしようもない… ずっと人知れず悩んできたけど、実は私も「あがり症」なんです
人からヘンに思われるのでは…と不安を増幅
―――誰しも、多かれ少なかれこんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。 “こんなつまらないことであがってちゃいけない。なんとかしなきゃ”と思えば思うほど、心臓は高鳴り、声はうわずって、しまいには自分でも何を話しているのかわからなくなって、頭が真っ白になってしまう…。 おそらく、10人に「あなたはあがり症ですか?」と尋ねたら、10人がYESと答えるでしょう。それほど、私たちにとって「あがり症」は身近な問題です。そして、中には切実な悩みを抱えた人もいます。きっと、緊張する場面を避けて目立たないようにしてきた結果、対人関係に臆病になってしまったり、人生の選択肢を狭めてしまったりしている人も多いはずです。 この問題に詳しい貝谷久宣先生は次のように話します。 「あがり症の根底には、“人からヘンに思われるのではないか”という不安感があります。恥をかくことによって自分の能力を低く見積もられるのではないか、自分の評価が下がるのではないかという思いが強く、自分が緊張していることを他人に気づかれるのを恐れるのです。なかには子供のころの“失敗体験”を引きずって、長年、緊張を強いられる場面から逃げ続けている人もいます」 しかし、いつまでも逃げてばかりではいられません。緊張や不安などのストレスは逃げれば逃げるほど大きくなるもの。いつかは自分から立ち向かっていかねばなりません。 でも、いったいどうしたら、あがり症を克服することができるのでしょうか。
Cace 1 スピーチ恐怖 声が震えてしまってブレゼンができない A子さん(OL・24歳)の場合 まじめな仕事ぶりでマーケティングスタッフのチーフに抜擢されたA子さん。しかし、そのとたんにほかの社員や取引先にプレゼンをする機会が急増―――これがA子さんの悩みの種でした。 最初のプレゼンでは、前の晩遅くまで資料をチェックし、何度も予行演習を繰り返しました。しかし、“もうすぐ私の番だ”と思うと心臓が高鳴り、手のひらや額から汗が噴き出してきます。そして、いざ本番となると声が震え、上司から「そんなに緊張しなくてもいいよ」と笑われる始末。そのひと言で頭に血が上ってしまい、何をどう話せばいいのかわからなくなってしまったのです。結局言いたいことも言えずに、プレゼンは大失敗…。 考えてみれば、A子さんは以前から人前での発表が苦手でした。中学のころはみんなの前で教科書を読むだけで緊張していましたし、学芸会などでは自分が話さなくてすむよう、目立たなくしようと神経をとがらせていたものです。大学以降は、人前に立つ場面も少なく、無事に過ごしていましたが、今、仕事上の問題として「恐怖」がよみがえってしまったのです。 自分でもどうしていいかわからず、情けないやら、恥ずかしいやら…。「結局、あの人にはチーフは無理だったね」と周りから言われている気がして、すっかり落ち込んでしまっています。 最も多くの人が悩みを抱えるあがり症 スピーチ恐怖は“発表恐怖”とも呼ばれ、あがり症の中でも、最も多く見られます。観衆からの注目を一身に浴びるため、「こんな大勢の前で恥をかきたくない」という防衛意識が働き、それにもかかわらず緊張していると、「失敗したらどうしよう」という不安を高め、悪循環に陥ってしまうのです。 Cace 2 発汗恐怖 デートで手の汗を指摘されて以来、対人関係を避けるように… B美さん(司書・23歳)の得合 B美さんは幼いころから人見知りをするたち。その傾向は成長してからも直らず、初対面の人や目上の人、ひそかに憧れている男性などの前に立つと、いつも緊張して身構えてしまうようなところがありました。自然にふるまおうとするほど、体がぎこちなく固まっでしまうのです。 そして、中学のころからは、緊張すると手のひらや額、わきの下に異常に汗をかくようになりました。授業で当てられただけでも手がぐっじょりぬれでしまうのです。最悪だったのは初めてのデート。B美さんの手を取った彼は、「エッ? こんなに汗かいて、どうしちゃったの?」と言ったのです。そのときのショックと恥ずかしさが頭から離れず、以来、B美さんば緊張する対人関係を極端に避けるようになってしまいました。 もちろん、男性とつきあったこともなければ、合コンやクラス会などの集まりに出たこともありません。仕事に図書館の司書を選んだのも、あまり人と接触せずにすむと思ったから。 でも、今でも突然人から声をかけられたり、質問されたりすると、手にジワーッと汗がにじんでくるのを感じます。自分の力ではどうしても汗を止められないのです。 不安に自律神経が反応してしまう 発汗には精神的な要因が大きく影響しています。発汗をつかさどっているのは自律神経ですが、脳の不安回路が刺激されることによって自律神経が反応し、発汗を促してしまうのです。日常生活に支障が出るほどのひどい多汗症の場合は、心療内科か皮膚科を受診する必要があるでしょう。
Cace 3 会食恐怖 給食の時間に吐いてしまった経験がトラウマに… C子さん(OL・25歳)の場合 C子さんは、他人と一緒に食事をとるのが苦手な「会食恐怖症」です。家でひとりで食べたり、家族と食べたりする分には問題ないのですが、こと外食や飲み会となると、「吐いてしまうのではないか」という不安がふくらみ、キュッと胃が締まるような感じがして食べ物を受けつけなくなってしまうのです。 ですから、ランチはひとりでお弁当。食事や飲み会の誘いはかたくなに断り続け、新年会なども欠席しています。 そもそもの原因は、C子さんの胃腸の弱さ。胃下垂ぎみで消化力が弱いC子さんは、子供のころから食が細く、人より時間をかけて食べないとダメなたちでした。ところが小学校の給食で、残さず食べないと教師から叱られるため、無理に食べて吐いてしまったのです。以来、C子さんにとって給食の時間は不安と緊張に縛られた拷問のようなもの。そして、いつしか人と一緒に食事をするとなると、「吐いたらどうしよう」という不安が頭をもたげ、緊張するようになってしまったのです。 しかし、人との食事を断り続けていたら、おそらく結婚はおろかデートすらできません。このままなんの出会いもなく過ごしていくのだろうかと思うと、将来に悲観的になってしまいます。 不安と緊張に対する胃腸の拒否反応 胃腸は、脳が受けたストレスに対し過敏なほどに反応する臓器。精神的な不安や緊張が胃や腸の動きを鈍くし、消化力を落として、食欲を減退させてしまいます。会食恐怖は、そうした要因に対人緊張が加わったことで、外食ができなくなる症状。もともと胃腸が弱い人に多く見受けられます。 Cace 4 赤面恐怖 赤面を笑いものにされているのでは… D代さん(26歳・アルバイト)の場合 D代さんは、ほんの些細なことでも緊張してしまい、赤面してしまうたち。たとえば、スーパーのレジでお金を支払うとき、小銭を探すのにちょっとでも時間がかかると、後ろに並んでいる人やレジの店員から「早くしてよ」と思われているようで慌ててしまいます。そんなときもカーッと頭に血が上ってきて、真っ赤になってしまうのです。 そんな緊張しやすい性格を自分でもよく知っているつもりでしたから、D代さんは、これまで極力、注目される立場にならないよう注意してきました。 しかし、先日、アルバイト先のファミリーレストランで、D代さんはつまずいてお客さんの服を汚してしまいました。お客さんはカンカン。D代さんは真っ赤になって「すみません」と繰り返すばかり。店中の注目の的となり、傍らからは「あの人、耳まで真っ赤だよ」という子供の声まで聞こえてきます。 そんな「事件」があってからというもの、D代さんは「みんな、私のことを笑いものにしてるんじゃないか」という考えに取りつかれてしまいました。自分でもおかしいとわかっているのですが、その考えを振り払えません。そして、以前にも増して人に警戒心を抱くようになってしまったのです。 恥をかいた経験が恐怖のきっかけになることも 赤面のメカニズムにはまだ科学的に解明されていない部分が多いのが実情です。赤面があっても、それを意に介さなければ問題ありません。ただ、赤面のために人前で恥をかいたり、バカにされたりという出来事があると、往々にしてそれが対人恐怖につながり、赤面恐怖症になってしまうケースが見られます。
こんなタイプのあがり症もあります 書痙:人前で文字を書くときに、指や腕、肩に力が入りすぎたり、震えたりするために字がうまく書けなくなる心身症状。緊張によって症状が強くなり、家でひとりで日記を書くときなどは問題のない場合が多い。 電話恐怖:通話中に口ごもってしまったり、声がうわずってしまったりするなど、電話応対に自信がないことから、電話を受けたり、かけたりすることを極端に避けるあがり症。呼び出し音が鳴っただけで心臓が高鳴り、受話器が取れなくなることもある。 振戦恐怖:「振戦」とは手や体の震えのこと。接客のお茶出しの際に手が震え、止めようと意識するほど震えてしまうといったケースが多い。大切なときに震えはしないかと、予期不安を大きくしてしまうあがり症のひとつ。 視線恐怖:他人から注目されているような気がして行動が萎縮してしまうなど、人の視線に過剰に神経質になってしまうあがり症。本人の勝手な思い込みだが、高じると人の視線が怖くなり、人込みに出られなくなったりする。 排尿恐怖:職場や学校のトイレのように人の話し声や気配が多いトイレでは用を足せないなど、排尿を巡る問題に不安感を抱いてしまうあがり症。尿意を我慢することが多いため、膀胱炎と結びつくケースも見られる。
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