何かをやろうとしてもやる気が出ない。ちょっとしたことでイライラしたり、落ち込んでしまう…。
気分の変化は誰にでもあることだけれど、ひょっとしてそれはプチうつのサインかも!?

お話をうかがったのは 貝谷久宣先生
イラスト/矢田勝美(イメージ)、板谷雪枝(実用) 取材・文/額賀敏恵
FYTTE No.223 2007.12 p118-119

“わけもなく涙が出る”のはプチうつのサイン

 夜になると不安やイライラを感じたり、食べ過ぎたり、眠り過ぎてしまう…。従来のうつ病とは少し違う反応を見せる「プチうつ」と呼べる症状が、20代の女性に増えています。

 「うつ病はほとんど1日中、ほぼ毎日うつ状態が続きますが、いわゆるプチうつの人たちは、週に3、4日だけ、主にタ方から夜にかけてうつ状態になります。プチうつといっても病気が軽いわけではなく、うつ状態になっている時間が短いということ。周囲も自分も病気になっていることに気づきにくく、うつ病より治りにくいケースもあります」(赤坂クリニック理事長・貝谷久宣先生)

 プチうつになる人たちの多くに共通して見られるのが、「わけもなく涙が出る」という前ぶれ。

 「通常、涙が出るときは、その前に悲しいことやイヤなことを体験したり見たりするものです。ところが、プチうつになる人たちは.わけもなく涙が出て、そのあとに悲しさや不安を感じ、いやなことが鮮明に思い出される、いわゆるフラッシュバックが訪れます。このように、夜になるとわけもなく涙が出るようなら、“プチうつ予備軍”といってよいでしょう」(貝谷先生)

プチうつになりやすい性格がある

 プチうつの原因は一つではなく、いくつもの原因が重なって起こると考えられています。その中で、持って生まれた性格も、なりやすいかどうかを左右するのだとか。

 「プチうつになりやすい性格は、いわゆるよい子タイプ。小さい頃から手がかからず、わがままでなかった女性に多く見られます。また、人からどう見られているかを気にする人もプチうつになりやすいといえます。なぜなら、人からよく見られたいがために、自分の考えを言わずに押し殺してしまったり、周りの人にダメな人間だと思われないように、がんばり過ぎてしまうからです」(貝谷先生)

 ただし、プチうつになりやすい性格の人が、すべてプチうつにかかるわけではないことも事実。

 「プチうつになりやすい性格を自覚することはよいのですが、あまり深刻に考え過ぎないほうがよいでしょう」(貝谷先生)

プチうつになりやすい性格

小さい頃から手がかからなくて、周りから「よい子」と言われていた人は、自分の感情を押さえ込む傾向があり、プチうつになりやすいそう。

自分が人からどう見られているかが気になる人は、周りからよく思われたいために言いたいことをガマンしたり、がんばり過ぎてしまいがち。

物事を悪いほう、悪いほうへと考えてしまうクセのある人は、小さなことでクヨクヨ悩み、それがストレスとなり、プチうつにつながることも。

プチうつのきっかけは環境にも

プチうつになるには、何らかのきっかけがあることが多いもの。

 「たとえば、友だちからメールの返事が来ないとき、自分は嫌われているのかも…と悩み、それが原因でプチうつになる人もいます」(貝谷先生)

 また、自分を取り巻く環境の変化が、プチうつのきっかけになることもあるそう。

 「転職や引っ越しなど、他人から見れば、決して不幸でもショッキングでもない出来事が、プチうつのきっかけになってしまうことがあります。周りの環境が変化したときには、ストレスをうまく解消するなどの工夫が必要です」(貝谷先生)

プチうつの原因になる環境の変化

友だちや恋人との関係がうまくいかないなど、対人関係のストレスや、けがや病気などの肉体的なストレスもプチうつの引き金に。

荷造りや片づけで体に負担がかかるうえ、さまざまな手続きにも膨大なエネルギーが必要。新しい環境への不安もあって、心身ともに疲れやすい。

新しい職場では、人間関係や仕事内容が大きく変わるもの。早く慣れたいとがんばり過ぎたり、こんなはずではなかったと恩い悩むことが原因に。