こころのお手入れ
日経ヘルス 2008-1 p54-58
医師も脳科学者も太鼓判
掃除をするだけで
「こころまでスッキり!!」
汚い!ぐちゃぐちゃの部屋は
あなたのこころの表れ!?
掃除をすれば
こころがすぐに元気になります!!
あなたの家の中は今、どんな状態だろうか? 物が散らかっていないだろうか。ホコリなどがたまっていないだろうか。
こころが不調になると、部屋も荒れる―――!。日常生活の中で、恐らく誰もがそんな実感を抱いたことがあるはず。実は、これは脳科学的にも正しいという。
「身繕いや部屋の状態というのは、日常の行動の総体。そこには、その人の脳の状態が投影されている。部屋の整理と脳の中は、基本的に相関するわけです」と、諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授。
ぐちゃぐちゃの部屋は、脳(こころ)の表れ。部屋の状態とこころの状態がリンクしているのなら、逆もまた真なり? つまり、掃除をして部屋をきれいにすれば、こころもスッキリする!
「確かに、ストレス解消や一種の脳トレ効果はあるでしょう。特に日頃、掃除をあまりしない人、苦手な人には効果が大きい」と篠原教授。
部屋もきれいになり、こころもスッキリ!! そんな一挙両得の掃除効果を紹介しよう。
整理整頓で気の流れが良くなると
能力が発揮でき、“運”'も引き寄せられます
グレース・ホーさん(風水研究家)
やればやっただけ成果が出る。
自信にもつながる。それが掃除です
小山 昇(武蔵野社長)
掃除は“執着”を
手放す修行の一つです
金原 東英さん
(大本山永平寺別院長谷寺)
掃除は“箱庭療法”のようなもの。
雑念が消えて、無心になれます
横森 理香さん(作家)
やる前は気が重くても、やってしまえば部屋もこころもスッキリするのが、掃除。精神科医で赤坂クリニック理事長の貝谷久宣医師は、うつなどの患者に掃除を薦めているという。
「現代人はこころと体の使い方のバランスがうまくとれていないことが多い。そのアンバランスを修正してくれる方法の一つが、掃除です」
貝谷医師によると、掃除には次のようなメリットがあるという。まず第一に体を動かすこと。気持ちが落ちこむと、体を動かすのもおっくうになり、家にこもりがち。するとまたあれこれ考えたり、くよくよしたり……。掃除は、そんな悪循環を断つ一種のエクササイズ。しかもいつでも手軽に始められる。
そして、掃除をするという行為に集中していると、自然と頭の中のゴタゴタが消え、無心になれる。「過去の悔いも未来への不安もどこかに消え、まさに『今に生きる』状態。このような無心になれる時問を持つことは、こころの健康にとって非常に重要」と貝谷医師。
篠原教授もこういう。「例えばぞうきんでふくという反復動作をひたすら続けていると、気分を調整する作用があるセロトニンが増えてくる。すると脳の中が鎮静化し、ストレスも減る」
また、汚かった部屋がきれいになると、当然、気分もスッキリする。「きれいにした!」という満足感や達成感も得られて前向きな気分に。家族や周囲の人から感謝され、人間関係も良くなる。「実際、掃除を毎日するようになると、患者さんの顔つきが変わってきます。表情が明るくなり、周囲に対し『ありがとう』という言葉も出てくる。精神療法としての効果も高いです」(貝谷医師)。
まさに、いいことだらけの掃除効果。篠原教授は、「掃除を義務や負担と考えるのではなく、一種の脳トレ、“こころ磨き”のツールとしてとらえてみては」と提案する。そこで、まずはどんなタイプの掃除が自分に合っているのか、左の質問でチェックしてみよう。「磨き掃除」はストレス解消に、「片づけ」は脳の刺激&活性化に特に効果的だ。
「磨き掃除」でも「片づけ」でも、掃除効果を効率的に得るには、三つの基本原則がある。
第一は、窓を開けて換気しながら、掃除をすること。第二は、掃除する場所を限定すること。「きれいにした!」という達成感を得るには、狭くてもいいから確実に仕上げることが大切だ。そして第三は、午前中にやること。「朝の掃除は1日を始めるこころの準備になります。やるぞ!と声に出して気合いを入れてから始めるといい」と貝谷医師。
床や窓をふく、台所のシンクを磨くといった反復動作は、脳内のセロトニンを増やし、こころを落ち着かせる。「頭の中でいろいろな考えが渦巻いている、ストレスがたまっているという人には、この磨き掃除がお薦め。磨いているうちにこころがスッキリしてきて、“こころ磨き”にもなります」と篠原教授。
さあ、実践編。磨き掃除には「明るくなった」「ピカピカになった」などの“視覚的サプライズ”も重要。コツは次の3点だ。
その1:明るくする
掃除をしたら部屋が前より明るくなった。部屋の明るさは、気分の明るさにも直結する。
「普段、掃除を怠りがちな窓ガラスや照明器具を磨くと、てきめんに部屋の中が明るくなります。カーテンも洗えば、一層効果的。布に染みついたにおいも取れます」と、花王生活者研究センターの井上紀子主任研究員。
窓ガラスは、ぬれたボロ布などで汚れをざっとふき取ってから磨く。水ぶきの後、もう一度からぶきすると、きれいに仕上がる。照明器具を拭くときは、必ずスイッチを切ろう。カーテンは洗って脱水をしたら、しわを伸ばしてそのままカーテンレールにつるし、自然乾燥させればいい。
その2:ピカピカに
ピカピカ光るものにはつい目が行ってしまう。これは人間が持つ「誘目性」という性質。掃除ではこの誘目性も大いに利用したい。つまり、磨くとピカピカになるものを優先的にきれいにすればいい、というわけ。
「例えば台所のシンクを磨いてみる。洗剤や泡を水でザーッと洗い流したとき、見違えるようにピカピカになったシンクが目に飛びこんでくる。これは一種のサプライズ。脳への刺激にもなります」と篠原教授。
台所のシンク、洗面台、蛇口、浴槽、トイレ、鏡など、磨けば光るものをきれいにしてみよう。もちろん、一度に全部やる必要はない。「今日はここだけを徹底的にきれいにする!」というやり方でもOKだ。
「例えば浴槽をピカピカにしたら、その日はゆったり半身浴を楽しむ。きれいになった後の楽しみもイメージしておくと、やる気が出ます」(井上研究員)
その3:ホコリを取る
部屋中を掃除するのはやはり面倒。ならば、とにかく見えるところだけでもきれいに。例えば座ったときに目につきやすい高さにあるテレビ、パソコン、テーブル、本棚などのホコリをふき取ろう。
「高い所から始めて低い所へ。これが掃除の基本です」と井上研究員。
また、いつも化学ぞうきんで床掃除をしている人は、水ぶきすると、皮脂などのこびりつきまで取れる。後で素足で歩くとツルツル感が爽快。触覚で得られる、“掃除”の達成感だ。
脳に刺激を入れたい、うつうつしたこころを活性化させたい人には、「片づけ」が効果的だ。
不要なものを捨てたり、散らかった物をしまったりして部屋の状態を変えることは、脳にとって新しい刺激になる。「片づけは一種の脳トレ」と篠原教授。
次に紹介する三つのポイントのうち、できることから始めよう。
その1:捨てる
積んだままの雑誌、何年も着ていない服、こまごました雑貨類……。「捨てたいけど捨てられない」という人も多いだろう。「この際、脳トレのつもりで、捨てる・捨てないの判断を自らに課してみては。苦手なことを意識的にやると、脳のアンチエイジングにもなる」(篠原教授)。
3年着ていない服は捨てる(リサイクルに出す)、存在すら忘れていた小物は捨てるなど、自分なりのルールを作ってみるのも一法。不要な物を捨てると、こころの中の不要物も一緒に捨てた感覚が得られるから不思議だ。
その2:しまう
ハサミは引き出しに、服はクローゼットに、靴は靴箱へ。人に帰る家があるように、物にも収まる場所がある。出しっぱなしになっている物は、それが本来あるべき場所に戻そう。
「女性は脳の構造上、机など平面の片づけは得意だが、押し入れや棚など三次元の片づけが苦手な傾向がある」と篠原教授。
いいチャンス!脳トレもかねて、苦手な三次元片づけにも挑戦してみよう。
その3:そろえる
たとえ部屋に物が多くても、雑然と置かれているか、きちんと置かれているかで、見た目の印象は全く異なる。
例えば、雑誌などの紙類を重ねる場合は、端をトントンとそろえてから置く。ペンなどの文具は同じ向きにそろえる。本棚の本は、高さや色に応じてそろえる……など。こんなちょっとしたことでも、部屋の中はずいぶん片づいて見える。まずは机の上、本棚まわりなど、ターゲットを決めて取り組んで!
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