けんこうQ&A けんぽだより 冬 No.124 2004.12 P19
::: 社会不安障害 :::
Question: 会社の朝礼時に持ち回りで行うスピーチで、毎回緊張してうまくしゃべれません。スピーチのことを考えると苦痛で、次回は会社を休もうかと考えています。これは自分の性格だから仕方がないのでしょうか?(32歳・男性)
「大勢の人の前で話す」「初対面の人と会話をする」「電話の応対をする」「人前で字を書く」―――このようなときに、緊張したり不安になることは、多かれ少なかれ誰にでもあることです。しかし、普通の人よりも「強い不安」を感じ、心や身体に様々な症状が現れることがあります。これは「社会不安障害」という心の病気です。 社会不安障害の人が抱く強い不安とは、「人前でパニックになってしまうのではないか」「失敗するのではないか」「恥をかくのではないか」などです。身体には、手足が震える、息が苦しくなる、動悸がする、顔が赤くなる、大量の汗をかくなどの症状が現れます。やがて、自分の不安や緊張を他人に気づかれまいとして、不安のもとになる状況を避け、職場や学校で人と上手く接することができなくなるなど、社会生活に支障をきたすようになってしまうのです。 ご質問の方も、症状から考えると社会不安障害の可能性があります。この病気の原因は、現在研究中ですが、脳内の神経伝達物質の乱れが有力な説として考えられています。治療にはそれらを調整する薬が主に使われます。また、物事の受け止め方や考え方を変え行動面に反映させていく認知行動療法が行なわれることもあります。どちらも確実な治療効果があるため、組み合わせて行なわれるのが一般的です。 「気持ちの問題だ」「性格だから仕方ない」と考え、この病気に苦しんでいる方が多くいます。治療が遅れると不安を抑えるためにアルコールに依存してしまったり、うつ状態に陥ることもあります。症状を自覚したら一度、精神科や心療内科を受診してください。他の病気と同様に、早期発見、早期治療が回復へのいちばんの近道です。
回答:医療法人和楽会理事長 貝谷久宣
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