パニック障害

医療法人 和楽会

なごやメンタルクリニック
心療内科・神経科 赤坂クリニック
横浜クリニック

理事長 貝谷久宣

また発作が起きたらどうしよう。電車に乗るのが怖い・・・

  前兆なく発症するパニック障害

 どんな人でもパニックに陥ることはあります。予期せぬ衝撃的な事件に遭遇すれば、右往左往するでしょう。心臓がドキドキしてのどが渇き、息も荒くなります。けれどこれは本来、人間に備わっている正常な反応です。危機に対して全身を駆動しようと、神経や心臓の働きが一気に高まるのです。

 ところが「パニック障害は、実際には何の問題も危険もないのに、突然、前述のようなパニック発作が起きるという心の病気です」と貝谷久宣先生はいいます。

 代表的な症状は、心臓がドキドキする、息苦しくなる、めまいや震えなどが現われる、などです。そして「このまま死んでしまうのではないか」という強烈な死への恐怖が芽生え、救急車を呼ぶ入もいます。ところが病院に着くと症状は治まり、検査を受けても何の問題も見当たりません。

 「これはパニック発作の典型的な症状です。パニック障害の診断基準を次にまとめてありますので、参考にしてください。このほか、下肢の脱力「つまり腰が抜けるという場合もあります」

 パニック障害が起こるきっかけはありません。「あるとき、突然、起こるのです。仕事や私生活で何の問題もないという人にも起こるときには起こります」。

 けれど、なりやすい体質というのはあります。「遺伝的傾向もある病気です。また、気が弱い人、人の顔色をうかがう傾向の強い人にも見られがちです」。

 また、そういう人ほど「また発作が起こるのではないか」と不安になる傾向が強く(予期不安)、「不安が不安を呼んで、発作が起こりやすくなってしまうのです。発作を恐れて1人で外出できなくなるのも(広場恐怖)、パニック障害の特徴です」。

 アメリカでは100人に3〜4人が罹患しているといわれている病気ですが、「私たちの調査では.3年前で女性は100人に6〜7人がパニック障害でした。女性は本来、不安を抱えやすいという傾向があるせいか、女性のほうが多かったですね」。

 最近の研究で、パニック障害の人たちは脳の一部、前頭葉の血流がよくないということがわかってきています。「前頭葉は、ものを考え、人とコミュニケーションを取り、我慢するなど自分をコントロールするという役割があります。ここの血流がよくないと、その働きが悪くなり、パニック発作が起こるのではないかと考えられているのです」と先生。

 心当たりがあるという人は、精神科や心療内科などを受診しましょう。「実際には、さまざまな症状があるだけに内科などほかの科で検査を受け、その科では『何も問題がない』と精神科に回ってくる人も少なくありません」。

 病院では問診を中心とした診断を受けたあと、治療となります。

 まずは薬物療法です。「抗不安薬や、SSIという抗うつ剤などを処方し、不安になる気持ちを抑えるようにします」。

 それと並行して認知行動療法を行なう場合もあります。「カウンセラーが物の受け取り方、感じ方を一つずつ分析し、固まった考え方を治していくのです」。

 また、たとえば電車の中でパニック発作を起こした人は、そのあと発作になるのが怖くて電車に乗れなくなりますが、「まずは改札口までその人の手を握りながら一緒に行く、次はホームまで……と
少しずつ慣らしていく暴露療法(エキスポージャー)や、ふだんから日記を書くことなどを通して意識を変えていくのです」。

 このほか、「最近、座禅を行なって呼吸を整えることが自立神経を整え、前頭葉の血流を促してその働きをアップさせるという報告がありました。そこで、私たちは座禅を治療の一つとして取り人れています」。

 おおまかなやリ方は次に紹介しているので、試してみるのもいいかもしれません。「いずれにせよ病気を上手にコントロールして、うまくつきあっていきましょう」。

レタスクラブ 平成18年5月25日号 Vol.600, P121