マリ・クレール 2006.2 vol.17 P181
PSYCHOLOGY 誰か止めて! 抑まらぬ妄想
Q:彼が浮気をするんじゃないかと心配で、要らぬ疑いや妄想ばかりが四六時中グルグル。私って、頭が変なの?(30歳・会社受付)
A:頭が変なの?という意識があるうちは、病気ではない。 恋人が浮気をするんじゃないかと常に心配で、ほかの女性といるところを想像してしまう……。自分に自信がなく、周囲が自分の悪口を言っているんじゃないかと落ち込んでしまう……。こういった頭にこびりつくネガティブな妄想。そうかと思えば、好きなタレントとの夢の日々を想像して、ふとニヤニヤしてしまう。そんなちょっと楽しい妄想もある。しかし、ネガティブでもポジティブでも現実に起こっていないことを想像してしまうこの“妄想行為”を繰り返していると、自分は大丈夫なんだろうか?とちょっと心配になってくるものだ。もしかしたら、ちょっと頭や心がヘンになってきているのではないか!? このままいくと現実ではなく妄想の世界に埋没してしまうのではないか……、と。 「いや、この方のようなお悩みはそんなことはありません。妄想をしているという現実、頭がヘンなんじゃないかという認識がある人は、病気ではありません。病的な妄想は、自分が妄想をしているという意識もないわけです。現実と妄想の区別がつかなくなってしまうんですね。そして誰がなんと言おうと修正不可能な状態となり、日常生活で何らかの差し障えがでてきてしまうのです。ですから、普通の人が言う妄想は、病的な妄想的人格障害とは異なると思ったほうがいいでしょう」というのは、心療内科・神経科 赤坂クリニックの貝谷久宣先生。 まずは孤独にならない! 思いを口に出してみる! ただ、恋愛に関しては、病的かそうではないかの区別をつけるのは非常に難しいという。ただの嫉妬か、病的な妄想をふくんだ嫉妬かは専門医でなくては判断はできない。「しかし、基本的にどんなケースでも、妄想を抱いている自分が認識できているような状態ならば大丈夫です。病的な妄想はそんなに稀に起こる症状ではありません。ただし、常に疑い深い気持ちや鬱、孤独感などが重なると、妄想に拍車がかかる場合があります。まずは、妄想しがちだな、妄想に気をつけたい、という意識があるなら、孤独から抜け出すことですね。一人で想像する代わりに、他者にその思いを話してみることからはじめてみてはどうでしょうか。孤独は心の病を進行させる一番の原因になります。嫉妬心も疑う心も、孤独を回避すれば少しずつ緩和されていくはずです」
COLUMN:妄想ぎみ状態をエスカレートさせないために ●孤独は心の万病のもと。孤独になる環境を避けて、なるべく人と交わるようにする。 ●ストレスもマイナス思考の原因なので、心身のリフレッシュを心がける。 ●自己嫌悪感や自信のなさがあると疑い深くなりやすい。自分の長所を挙げながら自分と向き合い、自信を持つことも必要。
回答:医療法人和楽会理事長 貝谷久宣
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