閉所恐怖症でMRI検査に不安

相談
37歳男性。慢性的に頭痛がおこるようになり、病院に行ったところMRI検査で調べるといわれました。しかし、私は閉所恐怖症で狭い装置の中で何十分も耐える自信がありません。検査をやめるべきか迷っています。

回答
心療内科・神経科 赤坂クリニック(東京都)理事長 貝谷 久宣

医師に相談し検査前に抗不安薬の服用を

 閉所恐怖症は意外に多い病気で、症状は基本的には二つの病気―特定の恐怖症(単一恐怖症)とパニック障害に引きつづく広場恐怖の症状と考えられます。特定の恐怖症は、特別な対象または状況に対する広範かつ持続的で、そして不合理な恐怖感です。恐怖の対象は大きく4つに分けられています。動物型は、蛇やクモなどの虫、さまざまな動物に対する恐怖、血液・注射・外傷型は人体に関する恐怖です。ご質問の閉所恐怖症は状況型に入ります。状況型では、ほかに高所や暗所などを恐れます。自然環境型は、嵐、風、雷などが恐怖の対象となります。

 特定の恐怖症をもつ人は、その恐怖感が非現実的であることに気づいていますが、大部分の人は日常生活のなかでそれに接触しないように行動しています。最近の調査では恐怖症をもつ人は全人口の約4割前後であり、治療を受ける人はその5%にも満たないと報告されています。女性のほうが男性の2〜3倍多いこともわかっています。大部分のケースでは、発症は小児期です。

 パニック障害に伴う広場恐怖の患者さんにも閉所恐怖がみられます。特定の恐怖症と異なるのは、パニック障害の後に発症することです。また、特定の恐怖症は理由がなくただその対象に恐怖感をもちますが、パニック障害にみられる恐怖症は、その場にいるとパニック発作がおこるのではないかという予期不安があります。

 これら両者による閉所恐怖症の治療はどちらも基本的に行動療法が効果を発揮します。この治療は、程度の軽い恐怖から高度な恐怖に向かってくり返し暴露するものです。雷恐怖などは実際に暴露することが難しいので、筆者のクリニックではバーチャル・リアリティーを利用して行動療法を行っています()。

 恐怖症のもう一つの治療法は薬物療法です。長期的治療としてはSSRIという抗うつ薬を持続的に服用することにより恐怖症体質が改善していきます。ご質問のMRI検査を受けられる場合にはこのような長期的治療は適応になりません。抗不安薬を検査の1時間前に内服するか、検査直前に静脈内投与を受けると不安・恐怖はほとんどおこりません。

詳しくは、 http://www.tokyocyberclinic.com/  を参照。

すこやかファミリー 10月号 P19, 2005