呼吸困難、動悸、吐き気、めまい、激しい発作をともなうパニック障害とは?


パニック障害はある日突然、何の前触れもなく、動悸、呼吸困難、死の恐怖に襲われ、30分ほどで発作はおさまりますが、パニック発作がいつ訪れるかという不安で、日常生活に支障をきたします。周囲の理解を得て、しっかり治療をしましょう。

パニック障害とは?

パニック障害は、ある日突然、心臓がドキドキしたり、呼吸が苦しくなったり、めまい、吐き気を感じる「パニック発作」を起こし、さらにいつ発作が起きるか不安になって、日常生活に支障をきたし、うつ病などを併発するリスクの高い病気です。

パニック発作でうつ病や日常生活に支障が生じることも

 パニック障害は1990年にWHOに登録されたばかりの新しい病気ですが、『種の起源』の著者で自然科学者のチャールズ・ダーウィンもパニック障害に悩まされたようです。「パニック障害はある日突然、何の前兆もなく、心臓がドキドキしたり、息苦しくなったり、吐き気、めまい、汗が出るなど、体の症状があらわれます。これがパニック発作で、その原因は強い不安です。そして厄介なのが、一度パニック発作を起こすと、またいつ発作が起きるかわからず不安で、電車や飛行機に乗れなくなったり、外出できなくなったりして、うつ病になってしまったり、日常生活に支障が生じます」と説明する赤坂クリニック理事長の貝谷医師。

パニック発作でうつ病や日常生活に支障が生じることも

 パニック障害は日本国内では100人に2〜4人ほどが発症すると言われ、20代、30代の女性が多いそうです。患者さんを悩ますパニック発作は、10分以内でピークに達し、ピーク時には「このまま気がおかしくなってしまうのではないか」「死んでしまうのではないか」と追い詰められ、30分前後でおさまり、何事もなかったように元の状態に戻ります。パニック障害は、パニック発作が起きていないときも、いつ発作が起きるか恐れたり(予期不安)、一人で外出できなくなったり(広場恐怖)、うつ病を併発することがあります。「パニック障害の根底にある不安感や恐怖感を突き止めて、薬でパニック発作を抑えながら、きちんと治療をしないと、慢性化して長い期間、つらい症状に悩まされてしまいます。家族や友人などがパニック障害を理解することも病気の回復には重要です」と説明する貝谷医師。

パニック障害を発症する年齢と性別

パニック障害は20〜30代の女性の発症が多く、パニック発作では動悸、呼吸困難、死の恐怖などに襲われてしまいます。

パニック発作とは?

ある限定した時間内に激しい恐怖感や不安感とともに以下に述べる症状のうち4つ以上が突然出現し、10分以内にピークに達する

@心悸亢進、心臓がどきどきする、または心拍数が増加する
A発汗
B身震い、手足の震え
C呼吸が速くなる、息苦しい
D息が詰まる
E胸の痛みまたは不快感
F吐き気、腹部のいやな感じ
Gめまい、不安定感、頭が軽くなる、ふらつき
H非現実感、自分が自分でない感じ
I常軌を逸してしまう、狂ってしまうのではないかと感じる
J死ぬのではないかと恐れる
K知覚異常(しびれ感、うずき感)
L寒気または、ほてり

DSM−WTr 精神障害の分類と診断の手引き第5版
(米国精神医学協会 2000)より抜粋
(貝谷医師が翻訳)

パニック障害の診断基準

広場恐怖をともなう/ともなわないパニック障害の診断基準

A をみたす。
再発性で不意のパニック発作の出現
発作後1ヵ月以上、以下の症状が1つ以上ある
次の発作を心配する
発作に関わることやその結果を心配する(とり乱してしまう、心臓発作が起こる、狂ってしまうのではないか)発作と関係する行動変化の存在
B 広場恐怖が存在する/しない
C パニック発作は物質による生理的作用ではないし(薬物濫用や服薬)、内科疾患によるものでもない(例、甲状腺機能亢進症)
D パニック発作はその他の精神障害、たとえば、社会恐怖(恥を恐れ社会的状況のみを忌避する)、特殊恐怖(エレベーターのようなただ一つの状況を避ける)、強迫性障害(汚されるという強迫観念を持つ人が汚いものを避ける)、および、分離不安障害(自宅や身内から離れることを避ける)により説明されがたい。