ストレス講座 〜その6〜 テクノストレス 早稲田大学人間科学部教授 情報技術革命(IT革命)という言葉が一世を風靡するようになって、あらゆる領域でコンピュータ化がますます加速されています。どんな職場においてもコンピュータのない仕事は考えられないくらいになっていますが、それにつれていろいろな弊害が噴出して注目を集めています。 クレイグ・ブロードというアメリカの心理学者は、1984年にコンピュータに従事する人々の間に多かれ少なかれみられる共通の病理をテクノストレスと命名しました。そして、テクノ不安症とテクノ依存症という2つのタイプを発見しました。 テクノ不安症とは、コンピュータ・テクノロジーを受け入れようとする際のあがきに起因するもので、その苦悶がイライラ、焦燥感、頭痛、悪夢、コンピュータ学習への抵抗の形をとってあらわれるコンピュータ不適応状態です。テクノ依存症とは、コンピュータヘの過剰適応の結果、論理回路による思考しかできなくなり、感情表現を喪失したり、多様で複雑な人間関係を回避するようになるもので、落ち込んだり種々の身体症状を呈するようになります。現代社会では、コンピュータ化が進むことによって、テクノ不安症は少なくなり、一億総コンピュータ依存症に向かっています。 テクノ依存症になりやすい性格傾向は、執着気質、こり症、完全癖、二者択一思考、生真面目、人ぎらいなどです。こういう人は、長時間コンピュータ作業に熱中するために、いろいろな心身の障害をきたすようになります。表1のようなサインがある人は要注意です。
テクノストレスの予防法は、(1)コンピュータに向かう時間を制限する、(2)頭の疲労を早くキャッチして休憩、休養をとる、(3)仕事を中断するときに頭をリフレッシュする、(4)毎日人と交流する場を持つ、(5)積極的に感情を出すようにする、(6)環境の転換、運動、自然に接する、森林浴、音楽療法などリラックスに努めるなどです。コンピュータは確かに便利で人間よりも確実ですが、あまりコンピュータにのめり込みすぎると社会生活に支障をきたすことになりかねませんから気をつけましょう。 (サイドメモ) テクノストレスと類似の言葉としてVDT(Video Display Terminal) 障害があります。VDT障害とは、コンピュータ画面を見ながらキーボード作業を続けることによる一種の職業病で、(1)疲労、(2)頸肩腕の痛み/こり、(3)眼精疲労という特徴があります。以下のような自覚症状があったら休憩、休養をとって、長時間のVDT作業を控えましょう
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