ストレス講座 〜その18〜 社会恐怖(社会不安障害) ― 人がこわい ― 早稲田大学人間科学部教授 社会恐怖とはあまり聞き慣れない言葉ですが、対人恐怖、あがり症、赤面恐怖、視線恐怖などを含んだ名称で正式病名では「社会不安障害」と言います。誰でも、人前では緊張したり、あがってしまうことはよく経験するところですが、こういう問題のために社会生活が障害されるようになるとある種の病気ということになり、何らかの治療が必要になります。心理的なベースにあるのは、「恥をかいたらどうしよう、失敗したらどうしよう、変な人だと思われたらどうしよう」といった予期憂慮・心配・はからいで、これが強すぎると、不安・緊張とともに、動悸、発汗、ふるえ、顔面紅潮(赤面)などの自律神経症状を呈することになります。家族や親しい人とは平気で話ができますが、社会的場面や人前では極度の緊張や不安を感じ、そういう場面を回避するようになります。人前で話ができない、はじめての人や権威のある人と顔を合わせられないということになりますと学校や職場に行けない、まして接客業などはとてもできなくて社会活動が制限されてしまいます。
上記のような症状が、長期間(6ヶ月以上)にわたっている場合に、社会恐怖と診断します。
社会恐怖の原因は、幼少時から人見知りが強いこと、集団の中に入りにくいこと、人との接し方がうまく習得できないことなどの素因・性格的要因がベースにあって、何か人前で恥をかいた〜失敗したという心的外傷体験が予期憂慮および回避行動を強くすると考えられます。こうしたことは誰しも経験することですが、ソーシャルスキルを獲得するとともに解消していきます。人前で不安・緊張が高まり、時にはドキドキしたり汗をかいたりするのは当然の反応ですので、それを「恥ずかしい〜異常」と考えないことがポイントです。引きこもってくよくよ考えるとますます恐怖感は強くなりますから、よく言われるように「清水の舞台から飛び下りるつもりで...」思いきって何かをやってみると意外に気持ちがふっきれるものです。 ケ
セラ セラ<こころの季刊誌> |