本態性高血圧の原因は
本態性高血圧の原因としては、遺伝的体質的素因に加え、食塩摂取量、肥満、寒冷、ストレスなどの環境因子が加わり発症するという多因子説が考えられています。ストレスにより血圧が上昇することはよく知られていますが、歴史的には 生理学者キャノンによるストレス緊急反応が有名です。すなわち、猫に獰猛な犬を吠えつかせた時には、かならず猫の血圧は上昇し、心拍数は増加します。このような反応は、動物が外敵に遭遇したときに、みずからの生命を守るために闘うか逃げるか(fight and flight)という緊急体制をとるためのきわめて合目的的な生理反応です。このような緊急事態で生じる情動は、怒り、恐怖であり、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの伝達物質を介して交感神経系の活性化がおこるので、キャノンの説は情動ー交感神経系学説とも呼ばれています。また、精神医学者のアレキザンダーは、「表出されない敵対的感情は血管系の持続的な刺激の源となり、それはあたかも抑制された生体が、決して起こることのない戦いのための準備状態にあるかのようである」と述べています。このように、本来生体に備わった外敵に対する防衛反応ですが、怒りや恐怖や不安という情動が適切に処理されないで慢性的なストレス状態に陥った時に、高血圧という二次的な弊害をもたらすということです。