不安の力の第1回に書いた人物が東京慈恵会医科大学精神科の初代教授・森田正馬先生だった。中山和彦教授はその東京慈恵会医科大学精神科の現教授である。精神薬理学が専門で時々関連の学会でお会いする事があった。いつもスーツを着用されていて落ち着いた物腰の先生だった。初めて直接お話したのは今年山口で開催された第13回多文化間精神医学会の講師控え室でであった。私の事も知っていて下さり、すぐに打ち解けて話をすることができた。中山教授はランチョンセミナーの講師として招待されて来られていたのである。講演名は「中原中也の千葉寺雑記、療養日誌にみる森田療法」であった。私も学会が開催される土地に生まれた人物について考えるのが好きだが、中原中也は山口を代表する詩人である。中也は、山口市内に大きな湯田町という温泉街があり、そこの裕福な内科医院に生まれた。何不自由なく育ったが、苦悩があり、不安がありそのため千葉寺に入寮し、森田療法を受けた。苦悩・不安・寂しさを詩って詩人になった。中也の寂しさは人々の魂に響く。精神薬理が専門の中山教授が「中原中也」「森田療法」の話しをされるのは少し意外な気がした。 ケ セラ セラ<こころの季刊誌> |