昭和ヒトケタ生まれの人は不安障害を有し易い 作家、開高健は、平成元年12月9日に食道癌で病死した。享年58歳の若さであった。エネルギッシュな行動や言動から、その早逝は意外な感もあるが、それだけ病的な命を超えるようなエネルギーであったとも言える。開高は、内因性の躁うつ病であったと考えられる。10代後半より58歳で死亡するまでの何度かのはっきりしたうつ病相と、5度の軽躁状態の時期があった。軽躁期には世界中を飛び回り、釣りをし、食し、飲み、放浪し、「もっと遠く!」「もっと広く!」「オーパ」「最後の晩餐」などの豊饒な文学に結実していった。「もっと遠く!」といった題名自体に、あり余るエネルギーが端的に表現されている。うつ病の体験をもとに「流亡記」「あかでみあ・めらんこりあ」「夏の闇」などの傑作小説が生まれている。 ケ セラ セラ<こころの季刊誌> |