西田幾多郎と鈴木大拙は日本を代表する世界的な哲学者と宗教家である。その偉大な二人が同じ年(1870年:明治3年)に同じ石川県で生まれ(西田:石川県河北郡宇ノ気村、鈴木:金沢市本多町)、同じ学校(第四高等中学校予科)の同級生(第一級)として学んでいる。これは歴史上奇跡のような偶然だが、そこには必然性も秘められている。加賀は歴史的に宗教性の高い精神風土である。鈴木大拙は次のように記している。「加賀の者とか北陸の者は昔から宗教心が強いとよくいうが、一向宗なんというような浄土真宗の盛んな本場でもあるし、また禅宗の方では曹洞宗に能登総持寺があるし、越前永平寺があって、禅も盛んなところである。加賀の殿様も代々曹洞宗であったのだから、金沢に曹洞宗の大きな寺がある。大乗寺にしても天徳院にしても立派な大きな寺である。」このような精神風土の中で西田も鈴木も若い頃から、自然によく参禅した。そして明治初期、第四高等中学ができたばかりである。そこに若き西田と鈴木が編入学し机を並べて切磋琢磨する。いやが上でも学問への情熱は高まったと思われる。 ケ セラ セラ<こころの季刊誌> |