本年度のアカデミー賞受賞作品は「英国王のスピーチ」という地味な作品でした。内容は、国王になる予定の無かった内気で吃音があるためスピーチが大変苦手だった王子が、突然第二次世界大戦直前に国王に指名され、対ナチスに対する威厳・威圧のためにも吃音のない堂々としたスピーチが求められ、必死の訓練から見事に吃音の無いスピーチを行い、英国民の不安を払拭し、英国軍を奮い立たせ、ナチスドイツに勝利するという物語です。このヒストリーの中で、映画になっている部分は、父親のジョージ5世からの命令で、クリスマスの御祝いのスピーチをしようとするも言葉が出ず、大失敗する所から始まり、ナチスドイツに対する宣戦布告のための国民向けスピーチまでの数年間で、主要な内容は涙ぐましい吃音治療と、その治療者ライオネル・ローグとジョージ6世の人間関係が確立していく様子をドラマチックに描いたものです。即ち吃音(社会不安障害)の治療がテーマの映画なのです。今ではフルボキサミンやパロキセチン等のSSRIを服用するだけで、特にこれといった苦労も無く普通に話せるようになりますが、薬の無かった時代はすさまじい、涙ぐましい治療.訓練を経てやっと克服できる事が映像表現されています。社会不安障害治療の歴史の貴重な再現映画にもなっています。 ケ セラ セラ<こころの季刊誌> |
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