パニック障害は“死にたくない”病

 パニック障害はある日突然、心悸亢進、呼吸困難、めまいなど心臓麻痺、呼吸停止、脳卒中といった死に直結する病気ではないかと不安を掻き立てる症状で発症する。それゆえ、死の恐怖感を体験する患者が多い。そして、この発作の再来を怖れおののき、医者巡りを開始するなど、生活の仕方が変わっていく。パニック障害の患者は死の恐怖の前に、右往左往すると言っても良い。いわば、パニック患者は、“死にたくない”病である。一方、うつ病は、深い憂うつ感と無気力を前にして絶望の淵に立たされる“死にたい”病ジャ。 最近、パニック障害患者498名を5年間追跡し、自殺行動を調査した研究が発表された。読者の方々が心配するから、まず結論から話そう。 パニック障害患者の自殺は多くない。その割合は一般人口の約半分であった。ただし、うつ病、摂食障害、アルコール中毒などを合併していた患者の自殺企図の割合は一挙に10倍近く増加したのジャ。ただし、このような人たちも自殺企図をするだけで、全部未遂だった。ワシの経験でも、自殺企図をした患者の心境を聞いてみると、“こんな苦しい思いをしても誰もわかってくれない…”と嘆き悲しみ、その結果、“死んでやる!”と言うことになるようダ。実際は、決して死にたくて仕方がないわけではないのジャ。パニック障害患者の自殺企図は、多くの場合、“ヘルプー!”のサインと考えることが適当のようジャ。ただ、間違って本当に亡くなる人もいるから、家族は常に注意をすることが肝要デスゾ。

Que Sera Sera VOL.24 2001 SPRING