なに事もよろこびずまた憂じよ。
功徳黒暗つれてあるけば(無住)

 この言葉をそのまま訳せば、「どんなことがあろうと、喜びすぎたり、悲しみすぎたりしてはいけません。というのは功徳天と黒暗天はいつも一緒に歩いているからです。」ということジャ。これは、鎌倉時代の僧、無住が「雑談集」に記した言葉だそうな。功徳天すなわち福の神と、黒暗天はすなわち貧乏神はいつも離れることはないので、多少の幸運や不運があっても有頂天になったり、激しく落ち込み召さるナということジャ。無住は“不動の心”の大切さを述べ、全ての事象にはすべて原因と結果があり、これを取り持つのが縁であると仏教の教えを示している。こちらの株を売ってもうけたと思ったらもう一つの株で大損と、功徳天と黒暗天のどちらに転ぶかわかりません。いちいち一喜一憂していたら疲れ果ててしまいます。ですから不動心を忘れずに暮らしましょうという事ですナ。

(中野東禅 凡人のための禅語入門 幻冬舎 より)

Que Sera Sera VOL.49 2007 SUMMER