放下著(ほうげじゃく)
プライドを捨てたら楽になります

「放下著」とは、『従容録(しょうようろく)』にある禅語です。わがままやプライド、余計な心配事などを放下(ほうげ)してごらんなさい、ということです。“お母さんを心配させたくない”ということにこだわってひとりで悩み心療内科の門をくぐる若いお嬢さんがいます。わたしは、“家族ぐらいには本心を話して気分を楽にしましょう”と言いますが、そのお嬢さんは、“私のプライドが許しませんとおっしゃる。その“プライド ”とはどこから来るのでしょうか?“私は他の人と違う、違いたい、同じにされたくない”という心もちでしょうか。  人間誰しも本当は弱いものです。自分の弱さを見せられないのはつらいですね。自分の弱さを見せてしまったら意外に楽になるのです。社交不安障害(対人恐怖)の人にこのような人が多いようです。本当に強い人は自分の弱さを知って強がらないのです。

(中野東禅著 凡人のための禅語入門 幻冬舎 より)

Que Sera Sera VOL.62 2010 AUTUMN