パニック障害
(Just Health 251)
赤坂クリニック・なごやメンタルクリニック・横浜クリニック理事長
貝谷 久宣
普通に暮らしていた人がある日突然、パニック発作に襲われる。20代から30代の若者を中心にふえているパニック障害は、忙しい現代人なら誰でもかかる可能性のある病気です。規則正しい生活で予防しましょう。
予期不安と広場恐怖が現れ一人で外出できなくなる
パニック障害は特別なきっかけや理由がないのに、突然心臓が飛びだしそうなほどバクバクしたり、息苫しくなったり、めまいや震えなどの症状が激しい不安感とともに現れる病気です。そのため多くの人は、はじめに内科や循環器科などを受診します。しかしパニック発作はおきてから10分以内にピークに達し、30分〜1時間以内におさまるのが特徴です。精密検査をしても「異常なし」と診断され、原因がわからないまま発作をくり返し、気づいたときには一人で外出することさえできなくなっていることもあるのです。
症状は、まず、恐怖感に満ちたパニック発作を経験したことで、またあの発作がおきるのではないかという予期不安が現れます。さらにパニック障害の3/4には程度の差こそあれ、広場恐怖(Q&A参照)が現れます。これにより、発作がおきたときにすぐ逃げ出すことができない場所(乗り物、エレベーターなど)や、すぐ助けを求めることができない状況(人込み、会議など)を避けるようになります。その場所が会社や学校であった場合は、生活にも支障をきたしてしまいます。
また、このほかにも家で一人で過ごすことが不安になったり、日常生活で「できない」ことが多くなったり、治療をせずに放置していると、多くの場合はうつ状態に移行していってしまいます。
不安体質とストレスだけでなく生活のリズムが乱れることも一因
パニック障害は脳内の神経伝達物貫がうまく働かないことでおこります。そこに不安体質とストレスがからむと誘発の頻度はますます高くなります。不安体質の傾向が強い人は軽いストレスでも発症しますし、不安体質からほど遠い人でも激しいストレス状態がつづけば発症する可能性があります。
また、それにプラスして、これまで多くの患者さんを診てきて思うのは、パニック障害の患者さんが増加した、一因に社会の近代化が挙げられるのではないかということです。時間的、空間的な過密社会におけるストレスに加え、昼夜の区別なく電灯がついているため日内リズムが乱れ、さまざまなものの電動化によってからだが虚弱化し、パニック障害を発症しやすい状況が助長されていると考えられるのです。
これまでの生活を見直し予防や治療を心がけましょう
つまりパニック障害は、忙しい現代人なら誰でもかかる可能性があるということです。予防のためには気持ちを楽にもち、リラックスした生活を送ることが大切です。もちろんこれは治療にも共通していえることです。たとえるなら江戸時代の儒学者・貝原益軒の「心は楽しむべし、苦しむべからず、身は労すべし、休みすぎるべからず」という言葉が、ぴったり当てはまります。また、酒やタバコ、暴飲暴食などはパニック発作をおこす引き金になることがあるので控えるようにし、ふだんから早寝早起きを心がけ、外気や日光に当たり、一日一回は汗をかくなど、これまでの生活を見直すことも大切です。
もし、パニック障害を発症しても、発作は薬で改善できますし、発作で死ぬことはありません。落ちついて専門医に受診し、早期治療を心がけましょう。
ジャストヘルス 3月号 平成16年3月1日 P26-27
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