患者さんの手記

38才主婦 名古屋在住

 10/15(火)(診察) 先回の診察から

 メイラックスが2r〜1rに減った事は、嬉しい反面若干不安もあった。

 でも、大丈夫だろうと思い、帰りタカシマヤで買い物をして帰った。

 先生から大好きなコーヒーを飲んでドキドキしたら、ダメと言われた事がなぜか心の奥に残っていた。

 パニックになってから、一日多くて2杯、ときどき飲んでいて何もなかったからだ。

 かえってそういわれると、ドキドキするんじゃないかと、飲む度に思うようになっている自分に気づく。

 そうしているうち、22日(火)午前中アイスコーヒーを一杯、イッキ飲みをした。その日は、いつもより苦いナと思ったけどおいしかった。その時は仕事中で、接客や雑事に追われていたが、一時ヒマになって、フーッと肩の力を抜いて伝票計算をしていた時、少し胸が苦しいナーと思いふと、もしやと思った。その時、先生が言ったコーヒーの話が思い出されて突然不安になり、深呼吸をしたら全身の血が頭までザワザワした感じになり、目がかすんだ。でも、心臓がドキドキするのはなかったです。

 久し振りの発作になってしまったと思いどうしようと慌てた。でも、店は一人でやっているし私が倒れたらダメだからしっかりしないと、「大丈夫、大丈夫」と、自分に言いきかせている時お客さんがみえた。「どうしよう」と不安になりながらも作り笑顔を作り、「いらっしゃいませ」と言っている自分。でも、頭がフワフワする。

 少しでも気を抜いたら絶対倒れると思い、引きつづき「大丈夫、大丈夫」と言いきかせて、何とか仕事は終えた。その後、まだ4時間も勤務があるからダメかもしれない。他のスタッフにTel.して、今日は帰らせてもらおうと思ったけど、冷たい水を何杯ものんでいるうち気持も落ちついて、発作もおさまった。パニック発作にしては軽いものだった。とりあえず、自分でコントロール出来たからです。ドキドキもありません。

 結局不安はあったものの、その日の仕事は最後まで一人で出来ました。変な自信がつきました。帰りの車の運転中も、赤信号で止まるのがこわいと思いました。また起こるのではないかと…。

 治療を始めて一年半、一度も発作を起こさずきたのに、ここでこんなになってしまい落ちこみました。

 本当はまだ、2rの薬が必要なのではないかと。10日間位そう思いました。

 その後も、仕事は無事続けています。週一度のテニスも続けていられるし、地下鉄も車もいつも通り乗ってます。きっと薬の血中濃度が半分くらいになった時に不安定になったんだろうと思います。

 けれどメリットもありました。

 2rのときは、眠くて何もする気が起きない時も多かったけど1rになってからはシャキッとして、家事もテキパキ出来る。体も軽い。夜も普通に眠れるし、食欲も少し出てきた。食べ物もおいしく思える。薬が体に慣れて来たんだと思った。

 デメリットは、たまに不安になるくらいで、この不安はパニックになる以前に思うような事です。

 ここ2〜3週で、私の考えは、大分変わりました。それは、パニック発作よりも、もっと重い病を抱えている子供や、いつ死ぬか分からないような国の人達と比べたら、私の病は、足元にも及ばないんじゃないかと…。とりあえず、薬でコントロールしていれば、普通の生活は出来るからです。

 こんなことでへこたれていてはダメなんだ、自分は幸せな方だと思うようになりました。

 それと、パニック発作で死ぬことはないと頭で理解出来ているし、もしこれで万が一死ぬことになってもいいやと思えるようになりました。すると、心の中がすーっと軽くなっていって、楽になったのです。人間の寿命は決まっているのだから、いつ死んでもいいような悔いのない日々を送っていこうと思います。

 来月、いいチャンスが来て、一度行ってみたかったパリ行きの話があり、行く事にしました。飛行機は長いので、チョット不安ですがチャレンジしてみるつもりです。

 パニック障害はやっかいだけど、一生薬とつき合っていく病気はいくらもある、そのうちの一つだと思い、受けとめていくしかないので、これから先何にでもチャレンジしていきます。

 コーヒーも相変らずおいしいし、発作も起きません。ひらき直ったわけではないですが、すごく心が楽になったのです。相変らず事故には恐怖がありますが、それは私以外の人でも思っているだろうから、深く考えないようにしています。人目も気にせず、他人に迷惑をかけず、私は私らしくいたいと思うようになった一ヶ月でした。

ケ セラ セラ<こころの季刊誌>
VOL.31 2002 WINTER