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『週間文春』H15.8.28号 P134-137

自分の、そして家族の健康・生命を委ねる病院は慎重に選びたい。だが、その基準となる情報は余りに少ない。そこに着目したのがランキングの草分けオリコン。患者へのアンケートをもとに『患者が決めた! いい病院』を出版する。それに先駆けベスト150を独占公開!

 オリコンは患者9万人にアンケート調査を実施。その結果、150人の「グッド・ドクター」が選ばれた。患者による病院ランキングは日本で初の試みで、同書はいわば、患者が採点する医療機関の“通信簿”だ。

 オリコンは創業以来、約40年にわたって音楽市場調査分野で、どの曲がどれだけ売れ、どのアーティストがファンの支持を受けているかなどを、客観的かつ公平な基準で、分かりやすくランキングしてきた。今やオリコン・グループから配信されるエンターテイメント情報は、一つの社会的基準として認知されている。

 しかし、そのオリコンが一見、畑違いにも思える「病院ランキング」に乗り出したのはなぜなのか。同社の小池恒右社長が語る。

「内閣府の『生活産業創出研究会』から昨年末出された報告書の中で、『よい医師・医療機関によって、よい医療サービスを受けたいという国民の二ーズは強く、医療情報関連サービスは、今後飛躍的に発展する可能性を秘めている』と指摘されていたことを受け、弊社では今年初め、医療に対する意識調査を行いました。

 その結果、9割以上の人が『よい医者・医療機関』や『よい医療サービス』を受けたいと思っているにもかかわらず『十分な情報を受けていない』と感じている実態が浮き彫りになったのです。

 そこで患者の視点に立った医療機関に関する情報を、客観的かつ公平に評価し、わかりやすくランキングすることこそが、長年の音楽市場調査で蓄積したマーケティング手法を持つオリコンがやるべき仕事だと判断し、今回のアンケート調査を行ったのです」

 オリコンは「ヤフー」などの協力を得て、今年2月から6月にかけ、関東一都三県に在住するインターネットモニターの中から無作為に抽出した18歳以上の男女9万人を対象に、ネットによるアンケート調査を実施。65,424件の有効回答を得た。

 「調査ではまず、アンケートに答えていただいた方に、患者として実際に受診し、他人に推薦したいと思う医療機関名を挙げてもらい、外来や入院、救急など受診状況について回答してもらいました。

 その上で、お薦め病院やクリニックについて、『医療全般』、『医師の技術や医療水準』、『医師の説明の丁寧さ』など8項目についての『満足度』をそれぞれ10点満点(『医療全般』のみ30点満点)で評価してもらいました。そしてその8項目の点数を合算したものを『総合満足度』(100点満点)としました。

 また全ての医療機関と診療科を対象とするため、『どの診療科を受診したか』を必ず回答してもらっただけでなく、『推薦できる医師』、『特にお薦めできるところ、満足しているところ』についてもコメントをいただきました。

 単純に得票数でランキングを出せば、受診者の多い大病院に有利になるため、『診療科別ランキング』では10票以上、『総合ランキング』では20票以上得票した医療機関を評価可能とみなし、それぞれの医療機関が獲得した満足度の平均値を算出。これによって、大学付属などの大病院も、街中の小さなクリニックも『同じ土俵の上』でランキング化することが可能になりました」(オリコン担当者)

インフォームド・コンセントは必須

 アンケート調査の結果、患者が薦める約1,500病院のうち、20票以上を得票し、86.6点以上の「総合満足度」を獲得した150病院が「グッド・ドクター」に選ばれ、この結果を元にオリコンが作成したのが、 に掲載した総合ランキング「グツド・ドクター」150だ。

 総合ランキング1位に輝いたのは、「五の橋キッズクリニック」(東京都江東区)院長の水沢慵一医師で、「総合満足度し98.2点という高得点をマーク。

 患者もアンケートの中で「とにかく診察が丁寧だし、親に対しての指導が的確。子供に対してもその病気に関する説明を、写真などを用いてしてくれる。土曜日の午後と日曜日も診察が可能なのが安心です」(39歳女性)と絶賛している。

 2位に選ばれたのは、聖路加国際病院(中央区)脳神経外科の石川医師。同科は医療水準、スタッフ、設備とも10点満点を記録し、患者からは「パニック障害で痙攣発作を起こしたとき、レントゲン、CTスキャン、脳波測定など、脳の精密検査を行ってくれた」(39歳男性)との声が寄せられている。

 また聖路加国際病院は脳神経外科の他にも17位に「メンタル系」(精神科、神経科、神経内科、心療内科をまとめたジャンル)の岡安医師が、93位に小児科の細谷医師が、そして125位に泌尿器科・性病科の福井医師がランクイン。「いろいろな科でも丁寧に診てくれるので助かる」(47歳女性)との評価を受けている。

 そして3位に入ったのが、婦人科の診療所「あいウイメンズクリニック」(墨田区)の伊藤医師。同クリニックには「検査費用を最初に明確にしてくれる。医師の説明が丁寧で、些細な疑問にも答えてくれる」(26歳女性)、「先生や看護師さんの対応が優しく、病院内がエステサロンのようにきれい」(29歳女性)など、多くの女性から、支持する声が寄せられたという。

 前出・オリコン担当者の話の通り、同社では総合ランキングとは別に、「診療科別ランキング」も実施。『患者が決めた! いい病院』には、内科、外科・小児外科、小児科、産科、形成・美容外科、歯科など、あらゆる診療科別に「グッド・ドクター」がランキング化されている。

 その「診療科別ランキング」の中から、特に読者の関心の高い内科、外科・小児外科、小児科のトップ10をピックアップしたものが に掲載した表だ。

 最も頻繁にお世話になる内科では、武蔵境クリニック(東京都武蔵野市)の中澤医師が総合満足度91.5点という高得点で、並み居る大病院を押さえ、堂々の1位。

 同クリニックの丁寧な診察ぶりは「“3分診療”ではなく家族・親戚の健康診断にも乗ってくれる」(28歳男性)、「不必要な診察をしない。治療方法や使う薬は患者と相談の上、決まる」(35歳男性)との患者の声からも分かる。

 また治療の中心が「手術」であることから、慎重な病院選びが求められる外科・小児外科では、東京都済生会中央病院(東京都港区)が総合満足度90点で1位に選ばれた。「グッド・ドクター」に選ばれた米山、石飛両医師には、「乳腺外科外来で受診した時、マンモグラフィや分泌物の検査など適切な治療をスピーディーにやってもらいました。その後のことも詳しく説明してもらいましたので、『乳がん』の心配もなくなりました」(60歳女性)といった感謝の声が寄せられている。

 そして幼い子供を抱える親なら誰しも気になる小児科では、総合ランキング1位に選ばれた「五の橋キッズクリニック」に次いで同じ東京都の「大川こども内科クリニック」(大田区)が2位に入った。

 アンケートで同病院を薦める42歳の女性は「設備が行き届いており、重症患者に対して、大病院との提携がなされており、その場で搬送してもらえる」と高く評価。「看護師も多く、予約なので待ち時間も少なく清潔感がある」(31歳女性)との声もあった。

 また3位の「のせこどもクリニック」(千葉市)の能勢院長には、39歳の男性から「小児医療に対する真摯な姿勢に好感。時間外でも場合によっては診察に応じてくれる。院長はアレルギー医療にも明るい」との評価が寄せられている。

 「アンケートに回答していただいた方々のコメントでも分かるように『インフォームド・コンセント』(治療の際、医師らから十分な説明を受け、患者が同意すること)はもはや、患者が病院を選ぶ際の必須条件といっても過言ではないと思います」(前出・オリコン担当者)

 さらに『患者が決めた! いい病院』には、「救急ベスト30」や「『待ち時間』満足度ベスト30」、看護師や受付の明るさ、親切さを評価する「スタッフ満足度ベスト30」や「プライバシー保護ベスト20」など、患者の視点ならではのランキングも掲載されている。

 小池社長はこう胸を張る。「確かに、これまでにも医療機関のランキングが行われてきましたが、その多くが医師や看護師などいわゆる医療サイドか、ジャーナリストによるもので、患者の生の声がこれほど的確に反映されたランキングは日本でも初めてだと自負しています。是非ともセカンド・オピニオン(主治医以外の医師の意見)の参考にして欲しいと願っています。また今回は調査、分析能力の限界から対象を、関東一都三県に絞りましたが、今後は『関西版』など、全国展開していきたいと考えています」