ストレスの害より多き実りかな
早稲田大学人間科学学術院 野村
忍
同じ出来事を経験しても、ある人は深刻に受け止め、ある人はラッキーだと考える、その違いはどこから来るのでしょう。論理情動療法の創始者であるアルバート・エリスは、ABC理論を提唱しました。ある出来事(Accident)があったとして、その結果(Conseqence)ひどいことになったとしても、それはその出来事そのものが結果をもたらしたというよりも、それをどのような見方(Belief)をしたかによるというものです。すなわち、ストレスの認知の仕方が重要な要因であるというわけです。
このような認知の修正による治療法を認知行動療法と言います。
認知行動療法というと難しく聞こえますが、「川柳、ことわざ」の中にもその身近な例がたくさんあります。例えば、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」とか「冬来たりなば、春遠からじ」などは有名なものです。「ことわざ辞典」を調べて気に入ったものを見つけて、名詞の裏にでも書き込んでおくといざという時に役に立ちます。(ケセラセラ「ストレス講座」参照)
ストレスの害より多き実りかな
そこで小生も一句ひねってみました。ストレスがかかると「困った、困った」、「八方ふさがりで出口がみえない」、「悪い時には悪いことが重なる」など悲観的な考え方が優勢になってますます事態を悪くしてしまいかねません。そんな時に、「確かに害もあるけど、このストレスのおかげで、いままで気づかなかったことを気づけてかえってよかった」とでも受け止められるとストレスもありがたいなという意味です。なかなか自慢の作だと思ったのですが、ある川柳の先生にお伺いすると「言い切ってしまって余韻がない」との批評でした。なるほど川柳も奥が深いと考えさせられましたが、これはこれで大事にしようと思っています。
みなさんも一句ひねってみて、気に入ったものができあがれば座右の銘にしてみてはいかがでしようか。
ケ セラ セラ<こころの季刊誌>
VOL.60 2010 SPRING
|