東京認知行動療法アカデミー

特別ワークショップ(申し込み受付終了)

期日: 9月17日(月・祝)
会場: 東京大学 本郷キャンパス 医学部教育研究棟 13階第6セミナー室
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
医学部教育研究棟への行き方:こちらをご覧ください。

第2回特別ワークショップ

期日: 9月19日(水)
会場: TEPIA 地下1階 B11会議室
http://www.tepia.jp/
TEPIAへの行き方: こちらをご覧ください。

9月17日のウェルズの特別ワークショップは、ホームページで受講を
募集いたしましたところ、5日間で定員に達してしまいました。
このため多くの先生方から、ウェルズのワークショップをぜひ受講したかったのに
間に合わず残念であるというご意見をいただきました。このため、ウェルズ先生に、
新たに9月19日(水)にも同じワークショップを開いていただけるようお願いしました。
その結果、日本心理学会の多忙なスケジュールにもかかわらず、ウェルズ先生には
快くお引き受けいただきました。そこで、以下の要領で、第2ワークショップを開かせて
いただきます。みなさまふるってご参加ください。

多数のお申込をいただきまして誠に有難うございました。
事前登録は終了させていただきました。

日付 時間 形式 講師 講義タイトル
9月17日(月・祝) 10:00 -17:00 ワークショップ エイドリアン・ウェルズ(マンチェスター大学) 対人恐怖への認知行動療法
9月19日(水) 9:30 - 16:30 ワークショップ エイドリアン・ウェルズ(マンチェスター大学) 対人恐怖への認知行動療法

※ 第2回特別ワークショップは9:30~16:30となります。
※ 逐次通訳あり

  • 受講できるのは、原則として、医師、臨床心理士、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、理学療法士、薬剤師、教員免許、学校心理士、産業カウンセラーの資格を持つ方か、心理学系の学部を卒業された方、心理系の大学院に在学中か修了された方です。(ご要望に応えて、受講資格を拡大いたしました)
  • 受講料は2万円です。
  • 受講生の上限は50名とします。先着順に受け付け、定員に達した場合は〆切とさせていただきます。
  • 参加された方には、研修証明書を発行いたします。
  • このワークショップは、東京認知行動療法アカデミーの正式科目として認定されます。

講師略歴

エイドリアン・ウェルズ 顔写真

エイドリアン・ウェルズ

マンチェスター大学 臨床心理学 教授
専門 不安障害の臨床心理学、認知行動療法

 エイドリアン・ウェルズは、イギリスの認知行動療法の若手の代表格と目されている臨床家・研究者です。
 イギリスのアストン大学で心理学を専攻し、リーズ大学でPh.D.と臨床心理士の資格をとり、その後、アメリカのフィラデルフィアのアーロン・ベックのもとで認知療法を学びました。ウェルズのオフィスには、若き日のウェルズとアーロン・ベックの写真が飾ってあります。
 帰国してオクスフォード大学のワーンフォード病院につとめました。ここで、デイビッド・クラークのもとで不安障害の認知行動療法の研究をして、対人恐怖の認知行動療法や、全般性不安障害への認知行動療法を完成させました。1996年にマンチェスター大学の講師となり、それまでの治療研究をまとめて著書『不安障害の認知療法:実践マニュアルと理論ガイド』を出版しました。この本はいろいろな不安障害についての理論と治療法をまとめたものとして高く評価されました。中でも、対人恐怖の理論と、全般性不安障害(GAD)の理論はとくに有名です。
 2003年には弱冠40歳でマンチェスター大学教授のポストにつきました。
 ウェルズは理論家でもあり、不安障害についての理論的著書を多く著しています。1994年には、G・マシューズと共著で『注意と感情:臨床的パースペクティブ』を書きました。この本は、抑うつや不安障害といった情緒障害を、認知心理学における情報処理の観点から捉え直したものです。認知心理学と臨床心理学の豊富な研究成果を厳密に検討した上で、情緒障害の背後にある注意と感情のメカニズムを明らかにしました。このために、ウェルズとマシューズは、SREF(自己調節実行機能)というモデルを考え、これによって不安障害や抑うつのメカニズムと治療を統合的に考えました。厳密にして壮大であり、理論的にして実践的な本であり、非常に高く評価され、1998年に英国心理学会の出版賞を受けました。この本は邦訳されています(邦訳『心理臨床の認知心理学』、箱田裕司・津田彰・丹野義彦監訳、培風館, 2002)。
 また、2000年には『情緒障害とメタ認知:革新的認知療法』を書き、「メタ認知療法 Metacognitive Therapy」の技法を完成させました。この技法は、臨床家の間で大きな反響を呼んでいます。

最近のウェルズ

 2007年7月に、スペインのバルセロナで開かれた世界行動療法認知療法会議(WCBCT2007)では、ウェルズは、世界の認知行動療法のリーダーとして活躍していました。会期中の4日間のほとんどすべてのコマに、ウェルズは出演していました。初日には、全日ワークショップ『不安・トラウマ・抑うつへのメタ認知療法』を開催し、2~4日目には、5つのシンポジウム、2つのパネル・ディスカッション、招待講演など、朝から晩まで、10個のプログラムに出ていました。最終日の招待講演は、『メタ認知療法:いろいろな障害に対する治療メカニズムと治療効果』と題した講演でした。非常に明快な内容であり、また臨床的な内容も豊富でした。500人収容の大ホールが満員となりました。同じホールで開かれたジュディス・ベックの講演と同じような人気でした。ここからも、ウェルズが、世界の認知行動療法のリーダーとして期待されていることが実感されました。現在イギリスの臨床心理学のリーダーとして活躍しているデイビッド・クラーク、ポール・サルコフスキス、アンケ・エーラーズなどの後を継いで、ウェルズは、将来のイギリスの臨床心理学を牽引することになるでしょう。

来日の経緯

 これまで丹野は何度かウェルズに来日をお願いしていたのですが実現しませんでした。
 今回、日本心理学会第71回大会(大会会長は東洋大学教授・安藤清志先生)の招待により、やっと来日が実現しました。また、大会会長の安藤清志先生のご好意で、アカデミーでのワークショップが実現いたしました。この場を借りて、安藤先生に感謝いたします。
 ウェルズは、日本心理学会において、以下の講演とシンポジウムに参加します。こちらのプログラムにもふるってご参加ください。

●日本心理学会 招待講演  

タイトル 「対人恐怖の認知メカニズムと認知行動療法」
日時:2007年 9月18日(火)10:00~12:00(予定)
会場:東洋大学 白山キャンパス 〒112-8606 東京都文京区白山5-28-20
講演には同時通訳がつきます。
この講演は大会の正式なプログラムとしておこなわれます。聴講するには、日本心理学会大会への正式参加が必要です。

●日本心理学会 シンポジウム

タイトル 「認知科学と臨床心理学の接点をもとめて」 企画・司会:杉浦義典(信州大学)
日時:2007年 9月18日(火) 13:30~15:30 (予定)
会場:東洋大学 白山キャンパス 〒112-8606 東京都文京区白山5-28-20
井上円了ホール
このシンポジウムは大会の正式なプログラムとしておこなわれます。聴講するには、日本心理学会大会への正式参加が必要です。

今回、ウェルズの来日が実現したことはたいへんな喜びです。今回のウェルズの講演とワークショップは、日本の臨床心理学や精神医学にとって、非常に大きな意義を持つことになると思われます。

主な著書

Wells, A. 1997. Cognitive Therapy of Anxiety Disorders: A Practice Manual and Conceptual Guide. Wiley. 『不安障害の認知療法:実践マニュアルと理論ガイド』(邦訳なし)
Wells, A. & Matthews, G. 1994 Attention and Emotion: A clinical perspective. Lawrence Erlbaum.『心理臨床の認知心理学』 邦訳あり 箱田裕司・津田彰・丹野義彦(監訳)培風館.
Wells, A. 2000 Emotional Disorders and Metacognition: Innovative Cognitive Therapy. Wiley. 『情緒障害とメタ認知:革新的認知療法』(邦訳なし)
Papageorgiou, C. & Wells, A. 2003 Depressive Rumination: Nature, Theory and Treatment. Wiley. 『抑うつ的反すう:実態、理論、治療』(邦訳なし)
Davey, G. & Wells, A. 2006 Worry and its Psychological Disorders: Theory, Assessment and Treatment. Wiley. 『心配と心理学的障害: 理論、アセスメント、治療』(邦訳なし)
邦訳論文としては、クラークとフェアバーン編『認知行動療法の科学と実践』(伊豫雅臣監訳、星和書店, 2003年)に「全般性不安障害」があります。

ワークショップ概要

 このワークショップでは、まずクラークとウェルズ(Clark and Wells, 1995)の対人恐怖モデルについて説明します。このモデルにもとづいて、個々の事例のケース・フォーミュレーション(事例定式化)の仕方を学びます。次に、ウェルズ(Wells, 1997)の治療理論にもとづいて、対人恐怖の治療のメカニズムを説明します。ここでは、(1)注意のあり方、(2)内的イメージの歪み、(3)他者から見られる自分についての否定的信念、という3つを変えることをめざします。これらの3つを変えるための技法を具体的に説明します。また、エクスポージャー法の効果をより高めるために開発されたメタ認知療法の技法についても触れます。このワークショップに参加すれば、いろいろな治療技法について学ぶことができるでしょう。

Clark, D.M. & Wells, A. 1995 A cognitive model of social phobia. In RG Heimberg, M. Liebowitz, D.Hope & F.Scheier (Eds) Social Phobia: Diagnosis, Assessment and Treatment. Pp 69-93. Guilford: New York. 
Wells, A. 1997. Cognitive Therapy of Anxiety Disorders: A Practice Manual and Conceptual Guide. Wiley.

ワークショップには、逐次通訳がつきます。

ワークショップの推薦文献、参考文献:
Wells, A., Clark, D. M. & Ahmad, S. (1998). How do I look with my minds eye?: Perspective taking in social phobic imagery. Behaviour Research and Therapy,36, 631-634 .
Wells, A. & Papageorgiou, C. (1998). Social phobia: Effects of external attention focus on anxiety, negative beliefs and perspective taking. Behavior Therapy. 29, 357-370.
Nutt, D., Baldwin, D., Beaumont, G., Bell, C., Denny, C., Knapp, M., Maxwell, R., McNicholas, F. & Wells, A. (1999). Guidelines for the management of social phobia/social anxiety disorder. Primary Care Psychiatry, 5, 147-155.
Wells, A. & Papageorgiou, C. (1999). The observer perspective: biased imagery in social phobia, agoraphobia, and blood/injury phobia. Behaviour Research and Therapy, 37, 653-658.
Wells, A. (2001). The maintenance and treatment of social phobia: A Cognitive Approach. Journal of the Norwegian Psychological Association, 38, 717-724.
Wells, A. & Papageorgiou, C. (2001). Social phobic interoception: Effects of bodily information on anxiety, beliefs and self-processing. Behaviour Research and Therapy, 39, 1-11.
Wells, A. & Papageorgiou, C. (2001). Brief Cognitive Therapy for Social Phobia: A case series Behaviour Research and Therapy, 39, 713-720.
Papageorgiou, C. & Wells, A. (2002). Effects of heart rate information on anxiety, perspective-taking and performance in high and low social-evaluative anxiety. Behavior Therapy, 33, 181-199.
Wells, A. & McMillan, D. (2004). Psychological Treatment of Social Phobia. Psychiatry, 3, 56-60.
Wells, A. (2007). Cognition about Cognition: Metacognitive Therapy and Change in Generalized Anxiety Disorder and Social Phobia. Cognitive and Behavioural Practice, 14, 18-25.
Wells, A., & Clark, D.M. 1997 Social Phobia: a cognitive approach. In Phobias: A handbook of Theory, Research and Treatment (ed. G.C.L. Davey). Wiley.
○日本語でウェルズ理論を紹介した文献
1) 心理臨床の認知心理学.2002 箱田裕司・津田彰・丹野義彦(監訳)培風館(Wells, A. & Matthews, G. 1994 Attention and Emotion: A clinical perspective. Lawrence Erlbaum.)
2) エビデンス臨床心理学:認知行動理論の最前線.2001 丹野義彦 日本評論社.  この中の第8章「対人恐怖の認知モデル」
3) 認知行動アプローチと臨床心理学:イギリスに学んだこと.2006 丹野義彦 金剛出版.  この中の第4章「異常心理学」と第5章「心理学的治療(認知行動療法)」
ウェルズのこれまでのワークショップ講師歴
ウェルズは、これまで毎年多くのワークショップを開いています。例えば、
 2001年 世界行動療法認知療法会議(WCBCT) バンクーバー大会
 2004年 ヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT)マンチェスター大会
 2006年 ヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT)パリ大会
 2007年 世界行動療法認知療法会議(WCBCT) バルセロナ大会
 丹野は、2001年のWCBCTバンクーバー大会において、初めてウェルズのワークショップを聞きました。非常に明快でわかりやすく、大きな感銘を受けました。この体験がきっかけとなって、ワークショップというものの神髄に触れ、多くのワークショップに出てみるようになり、その有効性に目覚めました。また、ワークショップに参加するためのノウハウを集めて紹介するようになりました。こうした経緯については、拙著『認知行動療法ワークショップ(金子書房)』や『認知行動療法ワークショップ2(金子書房)』にまとめました。今から振り返ってみても、ウェルズのワークショップのわかりやすさと有効性は、世界でもトップレベルにあると評価できます。
定員
50名

文責:丹野義彦(東京大学教授、東京認知行動療法アカデミー・カリキュラム担当理事)