なかなかやる気が起きない時
休みの日に、部屋の片づけやら、たまった資料の整理やら、原稿書きやら、家の雑用やらと、いろいろやろうと思うのですが、一日があっという間に過ぎてしまい、結局ほとんど何も手つかずのまま、夜になってしまうことがよくあります。どうも私は、少々ぐうたらなところがあるようで困ります。休みの日というのは、昼の間は時間が一杯あるように感じてしまい、もうちょっとしたら始めよう、もうちょっとしたら始めよう…と思っているうちに時間が過ぎて、気がつくと夜になっています。そして、夜になってしまうと、あと一、二時間では、たいしたことはできないだろうから、まあ、明日以降にやることにするか…と先延ばししてしまい、だんだん仕事がたまってしまいます。
同じような悩みを抱えた方は多いようで、「どうしてもやる気が起きなくて、一日だらだらと過ごしてしまう、どうしたらやる気が出るんでしょうか?」といったことを聞かれることがたびたびあります。そんな時、自分自身への自戒の意味も込めて、次のようなことをお話しすることがあります。
一日は長いようですが、何かしようとすると、実はあまり長くありません。だらだらと過ごしてしまいそうな時は、その日に一つか二つやることを決めて、まずは実行することが大事です。そこで、まず起きている時間を大まかに三コマに分けます。@午前九時頃から正午頃までの午前中の約三時間、A午後ニ時頃から午後六時頃までの午後の約四時間、そしてB午後八時頃から午後十一時頃までの夜の約三時間です。空いている時間は食事などの休憩時間です。この一日三コマの各時間で概ね何をするか計画を立てて実行します。目一杯何かしようとはしないことが肝心です。何か行動をするときには、その準備やら気持ちが乗ってくるまでに時間がかかるもので、集中してやれば一時間もかからないで出来ることでも、調子がもうひとつのときには、二、三時間の余裕を見ておくことが大事です。一コマが三〜四時間ですが、この一コマは長そうで案外短いです。やれることは、そう多くはないと最初から考えておくのがいいでしょう。たとえば時間が長くかかりそうな部屋の片づけなどは、午前中の一コマでまあこれくらいやって、午後の一コマであれくらいやって、夜の一コマはあと少しやったら今日のところはこれで終わりにしておくか…、くらいのペースから始めるのがいいでしょう。時間一杯の計画はきっと疲れてしまいます。
まずは、午前、午後、夜と、それぞれの枠で、十分に余裕をもってやることを決めて、実行してみることです。各コマで少しでいいので何か実際にやってみることです。やり始めて見ると、案外やる気が出てきて、予定より結構いろいろできるということがあるかと思います。これは作業興奮と言って、やり始めるとだんだん調子に乗ってくるという脳の性質によるようです。
中には、部屋の片づけなどを始めると、止まらなくなって、真夜中までやってしまうという方がおられます。やりすぎは、禁物です。疲れない程度に作業は少なめにして、時間はオーバーしないようにしましょう。私自身、なかなかやる気が起きない時に、自分にも、こういったことを言い聞かせて、やるべきことを始めるようにしています。うまくいく時もあれば、うまくいかない時もありますが、やる気までもう一歩というところで悩んでおられる皆さん、一度、試してみてください。
医療法人和楽会 心療内科・神経科 赤坂クリニック院長
吉田 栄治
ケ セラ セラ<こころの季刊誌>
VOL.63 2011 WINTER |