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大人の発達障害(ADHD /ASD)

Adult Developmental Disorders

大人の発達障害とは?

発達障害とは、原因は心ではなく、脳機能の偏りにあるといわれています。家庭環境や親の養育、本人の性格ではありません。
成人になるまで、発達障害と診断されなかった方では、一般にその特性の程度が軽いことや、それを補う能力を持っていること、周囲からサポートが良好であったこと、適性の合った進路を選択された方などが多いのでないかと思われます。
ちょっと個性の強い方、ちょっと変わった方と思われていることはありますが、特に学生時代には大きな問題とならないことは多いようです。
それが、大学・専門学校に進学する、社会人になる、仕事の量が増える、人との交流が必要になる、会社等の中で責任を持つ立場になるなど環境が変わり、困難を抱え、二次障害として不安・抑うつや身体症状が出現し、苦悩され、辛い状態となることがあります。

発達障害の種類としては、以下のようなものがあります。
一人の人が複数の発達障害の特性をあわせて持っている場合もあります

2022年10月から赤坂クリニックで発達障害(自閉症スペクトラム症ASD・注意欠陥多動性症ADHD)専門外来を開始します。詳しくはこちらのページをご覧ください。

発達障害の大まかな分類と特徴

大人の発達障害の主な症状は?

自閉スペクトラム症(ASD)

人の顔(目を)見て話すのが苦手。

  • 「相手の気持ちを察する」ことが難しい。
  • 集団行動が苦手で無理に合わせると苦しくなる。
  • 雑談では何を話してよいかわからなくなる。
  • 数名の集団での会話では話についていけなくなる。話に入っていけない。
  • 音や光、人に触れることに過敏。
  • 「空気を読む」ということができない。よくわからない。
  • 周りの人が普通にやっていることが、自分はなぜかできない。

注意欠如・多動症(ADHD)

  • 一つの作業をやっていても他の作業が気になるとそっちを始めてしまい結局全部中途半端になってしまう。
  • 片づけるのが苦手。
  • 物音や話し声がするとすぐに集中が切れる、注意がそれる。
  • ゲームやネットに夢中になるとやめられなくなって気がついたら深夜や朝方になっている。
  • 「まとめて」「簡潔に」話すのが苦手
  • メールの文章が長くなる。段落をつけることができない。
  • 話の要点がわからない、まとめられない。

限局性学習症(SLD)

  • 計算が苦手で会計のときに戸惑う。
  • 数字の桁が増えてくるとわからなくなる。
  • 読むこと、もしくは書くことが苦手。

このような傾向によって「生きづらさ」を感じていませんか?

どのような治療が必要でしょうか?

発達障害の特性は、その人が生まれもった「ものの感じ方・考え方・行動の仕方」などと深く結びついています。治療とは、それを根本的に変えることではなく、生活上のうまくいかないところを減らし、より良い生活が送れるよう、方策や工夫点を見つけ、本人が安定した居場所や役割を見つけることが大切です。 そのためには、なぜうまくいかないかを理解し、どうすれば良くなるか、様々なアプローチで探ることです。

的確な診断

  • 情報収集などに時間がかかることもあります。

薬物療法

  • 自分に合う薬が見つかるまでに時間がかかります。
  • 合併症状の対症療法も必要です。

対処法を身につける

  • カウンセリング、スキル・トレーニングなどがあります。
  • 集団や個人でも役に立ちます。

環境調整

  • 周囲にサポートを求めることも必要です。
  • 様々な支援機関を活用することができます。

主な発達障害の治療薬

抗うつ薬

  • 主に神経間のセロトニンなどのモノアミンの濃度を上げます。
  • 抗うつ作用(落ち込みを和らげる)、抗不安作用(不安を和らげる)、こだわりや強迫症状を改善するなどの効果が期待できます。
  • SSRI(ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)、SNRI(サインバルタ、トレドミン、イフェクサー)、NaSSA(リフレックス)など

抗精神病薬

  • 主にドーパミン受容体をブロックし、ドーパミンの作用を弱めます。
  • 興奮・易怒性などの改善にも効果が期待できます。
  • SDA(リスパダール、ロナセン、ルーラン)、MARTA(ジプレキサ、セロクエル)、DSS(エビリファイ)など

気分安定薬

  • 主に双極性障害(躁うつ病)の治療に用いられます。
  • 躁状態(興奮、気分高揚、易怒性)などを改善したり、気分の波を抑える効果が期待できます。感覚過敏に対して用いられることもあります。

ADHDの代表的な治療薬は、『ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)』『コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)』です。

ストラテラ(非中枢神経刺激薬)

  • 脳の神経には直接作用せず、ノルアドレナリン伝達物質の再取込み口(トランスポーター)の働きを邪魔します。その結果、ドーパミンの量を増やすことができます。
  • 一般薬扱いで、どの医師でも処方ができます。

コンサータ(中枢神経刺激薬)

  • 脳の神経に直接作用し、神経細胞にあるトランスポーターの働きを抑え、ドーパミンなどの再取り込みを直接防ぎます。
  • 日本では、認定を受けた医師しか処方ができない薬です。

※ADHDは、放出されたドーパミン等が過剰に「再取り込み」をされることで、神経伝達に支障が出ていると考えられています。

インチュニブ(非中枢刺激薬)

  • ADHD治療薬として、日本初の「選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬」です。
  • 小児患者(6歳以上18歳未満)のみならず、成人患者(18歳以上)に対しても、ADHDへの適応を有しています。
  • 臨床試験では、ADHDの中核症状である多動性/衝動性、不注意のいずれの症状でも改善がみられています。

服薬の注意点

薬には、即効性があるものや、服薬を開始した2週間後くらいから徐々に効果が出て、8週間くらいで安定した効果が得られるものもあります。
ご自分の判断で、服薬をやめたり、量を調整したりしないで下さい。
他の診療科、病院を受診するときは、お薬を服用中であることを必ず伝えて下さい。
服薬中の車の運転、飲酒は止めて下さい。
女性の場合、服薬中の妊娠・授乳は避けることが望ましいです。あらかじめ医師に相談して下さい。
普段とは違う様子がみられたら、医師に必ず相談して下さい。
紙に書いて伝えることも有効です。

対応策のヒント

性格や特性は人それぞれ
十人十色

自分の特性を理解し、周囲と話し合いを繰り返していくことは、より良い人間関係を築いていくために大切なことです。
自分の良いところや得意なところをいかしていける対応の仕方を工夫していきましょう。

赤坂クリニックでは、発達障害の検査(WAIS)を受けることが出来ます。確定診断ではなく、あくまで診断の目安、自己理解の一助となるものです。

ヒント1

見通しの立つ環境に

『時間と手順の見通し』

  • 想定外のことや慣れない状況が苦手なケースがあります。
  • できる限り、予定や手順に見通しをつけると安心です。落ち着いて仕事ができる場合があります。
  • 日課や流れは、目で見てわかるように、例えば、絵や写真カードで示したり、文字にしたりすることも良いです。
  • 見通しがつかない部分は、「ここは未確定」として理解しておきましょう。
  • 特に活動の「終わり」を明確にしておくと安心することがあります。例えば、「○時まで」「終わりはここまで」のようにしてから始めると良いです。
ヒント2

場所と意味を一致

『簡略化』

  • その場に行けば、活動の内容が分かるようにすると良い場合があります。
  • 例えば、ベットの上は「寝る」場所、この部屋は「食事をする」などのように、場所と活動をできるだけ一対一にしておくと安心です。
  • 場所、時間、やることなどは、区切る、小分けにする、分割することを意識しましょう。気持ちの切り替えにもなります。
  • 職場は責任と権限が不明確で、混乱しやすいものです。指示系統をはっきりと簡略化することでストレスを下げることができます。
ヒント3

時間を区切る

『短時間労働』

手を抜いたり、融通を利かせて作業をおこなうことが苦手なことが多いです。完璧に取り組みすぎて、かえって疲れてしまうことがあります。
例えば、短めに働くように休憩を小まめにとったり、時間を決めて行うことを意識することで、安定して長く取り組めるようになる場合があります。

ヒント4

こだわりを緩めましょう

『こだわりにこだわり過ぎない』

  • 自分独自のルール、信念を貫こうとし過ぎる場合があります。ルールに縛られることで、気持ちがイライラしたり、落ち込んだり、孤立してしまうこともあります。
  • こだわる良さもありますが、時にはずれたり、乱れたりするものです。ものごとがルール通りに運べないことも理解しておくことが大切です。
ヒント5

感じ方を和らげましょう

『感覚過敏への対策』

五感が鋭敏すぎる場合があります。生活場面は、何かと刺激が多くてストレスになりやすいものです。
例えば、ざわざわしたところで不安になったり、相手の話を聞き取れない、パソコンの画面に疲れやすいです。
相手の声以外の周囲の雑音も耳で拾ってしまう傾向がある場合は、イヤホンで弱い音楽を聞いたり、耳栓などを利用する方法もあります。
パソコンや蛍光灯の光が苦手な場合は、専用眼鏡やサングラスを利用すると落ち着くこともあります。
完全に避けることはできないため、徐々に慣れていくようにすることも大切です。

自分の特性を理解し、周囲と話し合いを繰り返していくことは、より良い人間関係を築いていくために大切なことです。
自分の良いところや得意なところをいかしていける対応の仕方を工夫していきましょう。
また周囲の人と連携体制を築いていきましょう。
ありのままの等身大の自分をみつめて、「今できていること」を評価し、良い面を広げていくようにしましょう。

<参考文献>

備瀬哲弘 大人の発達障害 マキノ出版、2010 平岡禎之 うちの火星人5人全員発達障がいの家族を守るための"取扱説明書" 光文社、2014

家族や周囲はどう対応したらよいですか?

病気を理解する

発達障害は脳機能の問題です。本人の性格や努力不足の問題ではありません。
発達障害を「正しく」知ることが本人と家族への応援の第一歩です。

周囲の人との連携

周囲の人と連携体制を築いていきましょう。場合によっては、発達障害支援センター等の相談窓口の活用も有効です。

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