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パニック症と社交不安症(ケセラセラvol.89)

医療法人和楽会 横浜クリニック 院長 海老澤尚

 

当クリニックはうつ病の他、不安症の診療を専門分野の一つに掲げていることもあり、パニック症や社交不安症の方も多く来院されます。

パニック症では突然の動悸、息苦しさ、めまい感、吐き気、腹部の不快感、火照り、胸痛、発汗、浮遊感、手脚の痺れ、震え、自分が自分でない感じ、などが発生し、「死んでしまうのではないか」「このままどうにかなってしまうのではないか」と恐怖・不安状態に陥るパニック発作が予期せずに繰り返し生じます。発作症状は始まってから数分以内にピークに達し、1時間以内で収まることが多いです。多くの場合、発作が収まった後は通常の生活を続けることができます。「また発作が起こるのではないか」と不安が続いたり、発作を誘発するような場面に恐怖・不安を抱いて避けるようになることもあります。発作は夜間睡眠中に起こることもあります。

電車(特に満員の場合、特急などしばらく停車しない場合、一人で乗る場合など)、飛行機、渋滞、映画館や美容院、レジ待ちの列に並んでいる、一人でいる、など逃げられず、助けを呼べない状況で発作が出ることもあります。睡眠不足や過労、飲酒(特にアルコールが体から抜けるとき)、カフェインも発作を誘発することがあります。発作への恐怖・不安から公共の乗り物に乗れなくなったり、行動範囲が狭くなって生活の質(QOL)が下がります。診断には、心臓・呼吸器疾患や甲状腺ホルモンの異常、薬物の影響などを除外することも必要です。日本人の0・8%がパニック症になったことがあるとされています(1)。

治療には、SSRIや抗不安薬などの薬物療法と、認知行動療法などの心理療法を行います。

 

社交不安症では、社交場面(人前で話をする、発表する、字を書く、食事をする、など)で強い恐怖または不安を感じます。そのため、そのような社交場面でうまく振舞えなくなったり、社交場面を避けるようになることもあります。ぎこちない振る舞いや過度に上がっていることに気づかれ、恥をかくのではないか、迷惑になるのではないか、ネガティブな評価を受けるのではないかと怖くなるのです。典型的には6カ月以上続きます。日本人の1・4%が経験したことがあるとされています?。

治療にはパニック症と同様、薬物療法と認知行動療法などの心理療法があります。

いずれもうつ病や双極性障害などの気分障害や他の不安障害が併存するリスクが高いので、注意が必要です。

(1)川上憲人
こころの健康についての疫学調査に関する研究、平成18年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)2007

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