マインド・ワンダリング状態は不幸?(ケセラセラ2023年11月号 vol.117)
医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣
私たちは、目の前の出来事とは関係のない、自分の周りで起こっていないことを考えていることがあります。また、過去に起こった出来事、将来起こるかもしれない出来事、あるいはまったく起こることはない出来事についてなんとなく考えていることもあります。この状態をマインド・ワンダリングと言います。マインド・ワンダリングは、人が学習し、推論し、計画を立てることを可能にする大切な時間でもあります。しかし、マインド・ワンダリングしている時は幸せな時間でしょうか?
このことについて最近の科学は興味深い結果を示しています。平均年齢34歳の2,250人の男女に、スマートフォンで連絡し、今何をしているかを答えてもらう調査がなされました。さらに、今の気分は100点満点で何点か、また今していること以外に考え事をしているかどうか(マインド・ワンダリングの有無)も尋ねました。
その結果、マインド・ワンダリングは46.9%の人に認められ、恋愛を除くすべての活動中に起こっていました。そして、マインド・ワンダリング状態は物事に熱中している時に比べ幸福度が低いことが明らかになりました。このことは最も楽しいことをしている時でもそうでした。
この結果が示唆するのは、何をしているかよりも何を考えているかの方が幸福度と関係が深いということです。結論はこの論文の題「A wandering mind is an unhappy mind」です。要するに、お皿一枚洗うことにも心をこめて、マインドフルに洗う方が、他ごとを考えて洗うよりも幸福度が高いということになります。
(Killingsworth & Gilbert, Science 2010)