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こどもの不安症

Childhood Anxiety Disorder

こどもの不安症について

言葉にできない不安を抱え、体調不良やぐずり(癇癪)、不登校(行きしぶり)というかたちで心身の不調があらわれることがあります。子どものメンタル不調は早期対応がとても重要です。

親が「不安」との向き合い方(付き合い方)を学び、子どもの言葉にならない不安な気持ちやそれによって生じている心身の不調に気づき、寄り添い、支えることが大切です。

当院では本人の治療だけでなく、家族支援にも力を入れています。未就学児の受診も可能です。

不安症の子どもは理由がはっきりしない以下のような状態がみられます

①吐き気
②朝になると学校へ行くのが嫌になる
③めまい
④学校へいくとお腹が痛くなる
⑤いじめはないのに教室に入るのを嫌がる
⑥発表するのが怖い
⑦じろじろ見られるのがいや
⑧頭痛がする
⑨通学の乗り物に乗れない
⑩給食の時間が辛い
⑪先生が怖い
⑫学校へいくと食べられない
⑬おならをしたのではないかと不安になる
⑭ヒトから臭いと思われているのではないかと不安になる
⑮教室に入ると息苦しくなる
⑯満員電車が辛い 心臓がどきどきする
⑰友達に自分の悪口をささやかれている
⑱友人の輪に入れない
⑲場面緘黙
⑳こだわりが強い
㉑過度な不潔恐怖
㉒心配過剰
㉓親から離れることを極度に嫌がる
㉔過度の怖がり 動物(クモ、虫、犬など)、自然環境、(高所・嵐・水)、血液、注射、負傷

不安症に関する疫学調査

出典:第18回日本不安症学術集会 抄録

まとめ:日本の不安症児は発達障害児より多いです。それなのに、家族からも行政からも見放されている子が稀ではなく、人知れず一人で悩んでいる子が多いようです。

<最近の不安症に関する研究結果>
不安症の親を持つ子供は、不安症を持たない親の子供に比べて、不安症の診断基準を満たす確率が約1.8倍高いという研究結果が出ています。
Lawrence, P. J., Murayama, K., & Creswell, C. (2019). Systematic review and meta-analysis: Anxiety and depressive disorders in offspring of parents with anxiety disorders.
J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2018 Nov 1;58(1):46-60. doi: 10.1016/j.jaac.2018.07.898.

小児・思春期の自傷行為

「不安抑うつ発作」が隠れていることがあります。

自傷行為は「叱ってやめさせる行動」ではありません

小児期から思春期にかけて、手首など自分の身体を傷つける行為がみられることがあります。 自傷行為を知ったご家族は、「どうしてそんなことをするのか」「死にたいということなのか」と驚き、強く叱ったり、「もう二度としない」と約束させたりしたくなるかもしれません。しかし、自傷行為の多くは、周囲を困らせるために行われるものではありません。本人が言葉にできないほど強い不安、悲しみ、怒り、孤独感などを抱え、それを一時的にやわらげるために行っていることがあります。
自傷行為と自殺企図は同じものではありません。しかし、自傷行為のある子どもでは、同時に「消えてしまいたい」「生きていたくない」という気持ちが隠れている場合があります。したがって、慌てすぎる必要はありませんが、決して軽く考えず、背景にある苦痛を理解することが大切です。文部科学省も、自傷行為を将来の自殺リスクを示す重要なサインとして、真剣に対応し、関係機関につなげるよう勧めています。

[文部科学省「子どもの自殺予防」] 不安抑うつ発作とは

不安抑うつ発作(ADA)と自傷行為

当院では、小児・思春期の患者さんにも「不安抑うつ発作(Anxious-Depressive Attack:ADA)」がみられることがあります。
不安抑うつ発作とは、突然、強い不安や抑うつ感が押し寄せ、続いて過去のつらい出来事や自分を責める考えが、繰り返し頭に浮かんで止められなくなる状態です。
たとえば、次のような経過がみられます。
中学生のAさんは、夜、一人で部屋にいると、突然、理由のはっきりしない強い不安と悲しみに襲われます。すると、昼間に友達から言われた何気ない一言や、以前に仲間外れにされた出来事が次々と思い出され、「自分は嫌われている」「自分には価値がない」と考え続けてしまいます。涙が出て、落ち着かなくなり、この苦しさを紛らわせようとして自分の身体を傷つけてしまいました。翌朝には比較的落ち着き、「なぜあんなことをしたのだろう」と本人自身も戸惑っています。
このような場合、自傷行為だけを問題にしても、十分な改善にはつながりません。その直前に、突然の激しい不安や悲しみ、過去の嫌な記憶、自分を責める考え、強い孤独感などがなかったかを、丁寧に確かめる必要があります。
このような症状の根底には社交不安症がひそんでいます。社交不安症の子どもが人間関係で窮地に追い込まれると、不安抑うつ発作が出現することがあります。自傷行為は、不安抑うつ発作の最中に生じる激しい精神的苦痛に対する「対処行動」の一つとして現れる場合があります。ただし、すべての自傷行為が不安抑うつ発作によって起こるわけではありません。さまざまな要因を総合的に検討する必要があります。
なお、不安抑うつ発作は私たちが臨床研究を続けている病態概念であり、現時点ではDSMなどに掲載された一般的な診断名ではありません。しかし、自傷行為に至るまでの心の動きを理解するうえで、重要な視点の一つになると考えています。また、この不安抑うつ発作への対処方法を私たちは10年以上色々試行錯誤してある一定のレベルまで達してきています。

ご家庭では、まず次のように声をかけてください

傷を見つけたときは、叱責したり問い詰めたりせず、できるだけ落ち着いて、
「つらかったんだね」
「話してくれてありがとう」
「傷つける前に、どんな気持ちや考えが浮かんでいたの?」
「一人で抱えなくていいよ。一緒に相談しよう」
と声をかけてください。
「家族を困らせたいだけでしょう」「そんなことで傷つけてはいけない」「もう二度としないと約束しなさい」といった対応は、本人をさらに孤立させ、自傷行為を隠すようにさせることがあります。大切なのは、行為を容認することではなく、その行為が必要になるほど苦しかった気持ちを理解し、安全を確保することです。厚生労働省の指針でも、説教、叱責、苦痛の軽視、的外れな励ましなどを避けるよう示されています。

[厚生労働省「自殺に傾いた人を支えるために」]

早めに専門医へご相談ください

自傷行為を繰り返す場合、傷が深くなっている場合、自傷の方法や場所が増えている場合、過量服薬がある場合、または「死にたい」「消えたい」と話している場合には、早めに児童・思春期の精神医療機関へご相談ください。
今まさに自分を傷つけようとしている、具体的な自殺の計画がある、多量に薬を服用した、意識や身体状態に異常がある、あるいは家族だけでは安全を守れない場合は、子どもを一人にせず、危険な物や薬を遠ざけ、直ちに救急車(119番)または最寄りの救急医療機関へ連絡してください。
自傷行為は、子どもからの「言葉にならない助けを求めるサイン」であることがあります。その行為だけを止めようとするのではなく、背景にある不安、抑うつ、孤独、つらい記憶、そして不安抑うつ発作の可能性を丁寧に調べることが、適切な治療への第一歩です。

ご家庭での関わり方と親への心理教育

子どもの不安症の克服には、ご家庭での適切な接し方がとても大切です。 当院では、お子さんご本人の診療に加え、保護者の方が不安症のメカニズム(CBTモデルや学習理論)を正しく理解し、不登校や自傷行為・不安抑うつ発作(ADA)などの危機的状況に適切に対処できるよう、専門的な「親への心理教育(プログラム)」をご用意しております。

よくある質問

腹痛ばかり訴えますが心の病気でしょうか?
まずは小児科などで身体的な病気がないか確認することが大切です。
そのうえで、検査では異常が見つからないにもかかわらず、登校前や不安な場面になると腹痛や頭痛を繰り返す場合には、不安が身体症状として現れている可能性も考えられます。子どもは、不安やストレスを言語化するのが難しく、体調不良として訴えることが多いです。
発達障害と不安症の違いは?
発達障害と不安症は別のものですが、両方がみられるお子さんも少なくありません。
実際に当院にも、「発達障害ではないか」と相談に来られた結果、不安症が背景にあり、不安症への治療によって学校生活や日常生活が大きく改善するお子さんがいらっしゃいます。
それぞれの特性や背景を丁寧に見極めることが大切です。
様子を見ても大丈夫ですか?
不安や緊張は、誰にでもある自然な感情です。一時的なものであれば、成長とともに落ち着いていくことも少なくありません。
しかし、不安が強いために学校へ行けない、人前に出られない、お腹や頭が痛くなるなど、日常生活に支障が出ている場合には、不安症が背景にある可能性があります。
「そのうちよくなるだろう」と様子を見ているうちに、不安を避ける行動が増え、かえって症状が長引いてしまうこともあります。
気になる様子が続く場合には、一人で抱え込まず、早めに専門家へ相談することも大切です。早い段階で適切な支援につながることで、お子さん自身も保護者の方も安心して過ごせるようになることがあります。

医師の紹介

貝谷 久宣(かいや ひさのぶ)

クリニックを開院以来パニック症を中心に不安障害の診療に35年余り携わってきました。その間に、「NPO不安抑うつ臨床研究会」を立ち上げ、その後は「日本不安症学会」の創立にも関与し、不安症の臨床研究を推進してきました。多くの大学での不安症の講義も行ってきました。パニック症の患者さんの診察には世界中で誰よりも多いのではないかと思っています。現在も不安症における最新医療を東京と横浜で行っています。不安症の治療は医師による薬物療法と臨床心理士による認知行動療法を行うことにより初めて満足のいくものになります。私のクリニックではそれを果たすことが出来ています。現在の私は、子どもさんが笑顔を見せ、また通学を始めてくれるのを見るのが一番幸せです。

(京都府立医科大学客員教授、日本不安症学会名誉会員、日本マインドフルネス学会名誉会員、日本心身医学会功労会員、精神保健指定医)

業績リスト
貝谷 久宣

貝谷久宣理事長 note

子どもの不安症などについて発信しています。

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