コーヒーの好き嫌いとガルシア効果 前篇
ガルシア効果。みなさんは耳にしたことがありますか?これは心理学や行動学の研究分野で「味覚嫌悪学習」のことです。誰でも、食べ物を食べた後に、腹痛・吐き気・嘔吐などの不快な経験をし、嫌いになったことがあると思います。
このガルシア効果について、なごやメンタルクリニックの原井先生が身近な例えを使って説明してくださっていますので、ぜひ一度、こちらを読んでみてください。
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コーヒーという嗜好品
誰にでも自分の好きな嗜好品というものがあるでしょう。栄養になるわけでも、健康に役立つわけでもなく、単純に好きで飲んだり食べたりするものです。タバコのように健康に悪いと分かっていても好きだから吸うという方もあるでしょう。
私の場合はコーヒーです。1日数杯は飲んでいます。診察中も合間があれば、インスタントコーヒーを自分で淹れて飲んでいます。コーヒーに含まれるカフェインは中枢神経に作用する物質です。交感神経興奮作用と利尿作用があります。毎日、コーヒーを飲んでいたひとが急にやめると、頭痛や疲労感、集中力欠如などの離脱症状が現れることがあります。そんな私が、この1年間、2回コーヒーを止めました。
止める理由その1 歯のホワイトニング
普段はあんまりエステには拘らない私です。歯並びが悪くても、小学生のころに詰めたアマルガムの銀歯があっても、噛めて食べれれば良い、見た目は関係ないと思う方でした。しかし、去年の夏、小学生の姪っ子から、「おじさん、歯が汚い」と言われてしまいました。彼女は歯列矯正中のせいか、歯については五月蠅くなっていたのでした。ショックでした。私も、一念発起し、アマルガムをセラミックにし、ホワイトニングも受けることにしました。
2週間、毎晩、歯型に漂白剤をつけて、口にくわえ、そのまま寝るのは対して苦痛ではありませんでした。苦痛だったのが、コーヒーです。歯科医によれば、コーヒーは歯を着色させるから、ホワイトニング中は、禁コーヒーだというわけです。1杯くらい?と尋ねましたが、それでも色が付く、という返事でした。2週間のコーヒー断ちが始まりました。頭痛は起きませんでしたが、疲労感・集中力欠如はありましたし、何よりもコーヒーが飲みたい、という気持ちをこらえるのが大変でした。ホワイトニングが終わってからは、またガンガン飲みだしました。
もっとも、そのせいでしょうか、また着色してきたみたいです。コーヒーが原因なのか、と思っても、コーヒーを止める気にはなりませんでした。
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止める理由その2 胃痛
研修医のころ、胃潰瘍で苦しんだことがあります。一度、ピロリ菌の除菌療法を受けてから、すっかり良くなっていました。ところが今年の夏の初めに、再び、あの胃の痛みが生じるようになりました。朝の空腹時に痛くなり、食べると少しましになる、上腹部の痛みです。内科を受診し、制酸剤(ファモチジン)をまた飲むようになりました。コーヒーは胃液分泌を促進する作用があります。朝の空きっ腹のときにコーヒーを飲むと、胃の痛みがなんとなく強くなるという経験を以前にしていた私は、誰に言われるまでもなく、内科を受診したときから、コーヒーを飲まなくなりました。
ところが、今度はホワイトニングのときのような、「コーヒー飲みたい」は起きませんでした。ホワイトニングの最中に胃潰瘍になっておけば、コーヒーを簡単にやめられたのに、と思ったぐらいです。
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理由1と理由2で違う理由は?
歯に色が付くという理由では、コーヒーを嫌いになれないけれど、胃が痛くなるという理由では、コーヒーを嫌いになれるわけです。コーヒーのせいで歯に色がつくのは経験上、はっきりしていますが、コーヒーのせいで胃が痛くなるのはそれほどはっきりしていません。何年もの間、毎日、何杯ものコーヒーを飲んで、なんともなかったのです。それが胃が痛くなったとたん、私はパタンとコーヒーをやめてしまいました。なぜなのでしょう?