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マインドフルネスの臨床効果と脳科学⑨ 瞑想は脳の前後・左右の連絡を密にする(ケセラセラvol.103)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

前回のマインドフルネスシリーズの第8回では、“マインドフルネスは脳内の結合を高めるか”でした。今回もこれに関連した脳科学的事実を見てみましょう。一口に言うと、瞑想は脳内の前後・左右、すなわち、上縦束と脳梁(図1)の結合性を高めることが報告されています。前頭部と後頭部を連絡する上縦束の神経線維束密度の増加が報告されていますし(Foxら、2014)、また、Ludersら(2011)は拡散テンソル画像を用いての瞑想経験者30人と未経験者30人の脳梁の微細白質構造を検討しました。その結果、瞑想経験者では脳梁の中央部から前部にかけての白質密度の増加が証明されました。

では、左右の大脳半球の連絡が瞑想により密接になったら脳はどうなるのでしょうか?米国ロサンゼルスの(Kurthら、2015)はMRIを使って瞑想歴4年から46年(平均19.8年)に及ぶ50名と瞑想経験のない50名の脳のMRI画像を比較しました。その結果、瞑想歴のない群では左半球と比べ右半球の大脳後頭部の楔前部という脳部位(図2)が大きいという非対称がありましたが、瞑想歴のある群では左半球の楔前部がやや大きくなり、ほとんど対称性でした(図3)。さらにまた、瞑想群では左側頭頂間溝(図4)周辺の灰白質が肥厚しており、その程度は瞑想年数が長いほど著明でした。

次に、 瞑想により変化した脳部位はどのような生理的機能を持っているのでしょうか。
頭頂間溝の主な機能は、感覚と運動の協調 (眼球運

動や到達運動の方向制御) や視覚的注意と言われています。その他には、記号的な数字の情報の処理、視覚空間的ワーキングメモリー、そして他人の意思表示の解釈などがあると言います(Wikipedia)。ですから、この部の機能が高まれば、仕事がてきぱきとでき、上手にヒトの気持ちを察することができるようになるのではないかと考えられます。楔前部の機能は、感覚情報を基にした自己身体マップがあると言われてきましたが(Wikipedia)、最近の研究では自己及び他人の身になっての空間認知と関連し、この部が障害されれば方向音痴という状態もあると想像されます(高橋ら2015)。そしてさらに重要なことが分かってきました。楔前部は自己意識を司っており、睡眠や麻酔で意識がない時には機能が低下する脳部位であることが明らかになりました(Cavanna & Trimble、2006)。
楔前部の一部はいわゆるデフォルトモード・ネットワークを構成しており、このネットワークの活動性増加は自己関連思考やマインド・ワンダリングと関係し、反対に、瞑想や仕事への熱中でこの脳領域の活動は低下すると言われています(Brewerら、2013)。要するに、楔前部は「自己」が宿る主要な脳部位の一つと言えるでしょう。また、最近、京都大学こころの未来研究センターから右楔前部の活動性が低いほど主観的幸福度が高いという研究結果が報告されています(Satoら、2019)。また、健常人でのセルフ・コンパッション(自身の強み・弱みを認め、どんな状況でもあるがままの自分を肯定できる心理状態)は右後部帯状回/楔前部の活性低下と関係していることもわかりました(Liuら、2020)。

以上のことから、瞑想により左楔前部の皮質が厚くなり、左右の非対称が消失していくという所見は、左側が右側の楔前部を抑制しているものと考えられます。このようにして、瞑想は主観的幸福感やセルフ・コンパッションを生じさせているのだと推定されます。

文献
Fox KCら、NeurosciBiobehav Rev 2014; 43:48
Luderse E ら、Neuroimage 2011; 57:1308
Kurth Fら、Soc Cogn Affect Neurosci. 2015; 10:55
高橋伸佳 高次脳機能研究 2015; 35:221
Cavanna AE & Trimble MR、Brain 2006; 129:564
Brewer JAら、Frontiers in Human Neurosience 2013;7:647
Satoら、Sci Rep. 2015 ;5:1689
1Liu Gら、Psychol Med. 2020; 23:1

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