医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長　岸本智数

昨年の夏から秋にかけて減少していた新型コロナウイルス感染症の陽性者数が年末年始に急激に増え、緊急事態宣言が1月8日から1都3県に、愛知県では1月14日から発出されています。
名古屋駅で年末まで見られた団体ツアーはさすがに見られなくなりましたが、ニュースでも報道されているように、前回の緊急事態宣言の時の名古屋駅周辺の極端な人出の減りに比べると今回は減り具合は少ないようです。駅周辺では複数の飲食店が閉店の案内を出している一方で、新たにラーメン屋などがオープンするなど、今回の緊急事態宣言でいろいろ話題になっている飲食業界にもいろいろな変動が起こっているのかもしれません。
また、印象ではありますが、緊急事態宣言が延長されたこともあるのでしょうが、自粛疲れを言われる方や今までそれほど新型コロナのことを心配していなかった方も心配される人が増えてきたように思います。この原稿を書いている2月はまだまだ気温が低い日が多く、乾燥に加えて花粉も飛び始めたようですので、ワクチン接種が開始され効果が出てくるまでもう一息、新型コロナウイルスをうつしうつされないように頑張っていきましょう。

さて今回は、以前に引き続き文響社から出版のTestosterone氏、久保孝史氏らが著者の「超筋トレが最強のソリューションである　筋肉が人生を変える超科学的な理由」の第3章、サブタイトルは「モテたかったら筋トレしかない」についてご紹介したいと思います。

筋トレするとモテるのか？ との問いにTestosterone氏は、正しい筋トレによって異性が理想とするカラダを作ることができる、と答えています。男女がどのような体系の異性を好むかについて複数ある研究の中から、ニューカッスル大学のグループが2012年に発表した「魅力的なカラダとは？」をテーマにした論文を紹介しています。男女40名ずつを対象に、異性および同性について自分が理想だと考える体型の3Dモデルをパソコン上で作成してもらい、そのデータを解析したものです。女性が理想とする女性の体型と、男性が理想とする女性の体型はほぼ同じだったそうです。

では、そもそも筋トレで異性に好かれるような理想的な身体を作ることは可能なのでしょうか。
多くの研究報告から、トレーニングの際に可動域を変化させることで、部分的な筋肥大を誘発できる可能性があるそうです。シンプルに筋トレ中に動いた筋肉が発達すると考えると良いようです。が、Bloomquisら（2013）の研究では、12週の間、週に3回深いスクワットを行ったグループと浅いスクワットを行ったグループとを比較すると、深いスクワットを行ったグループでは太ももの前の筋肉が有意に筋肥大を起こしていましたが、浅いスクワットを行ったグループでは太ももの付け根付近しか筋肥大しておらず、膝にかけての部分は筋肉量が減っていました。鍛えたい部位に合わせた筋トレがあり、トレーナーなどの専門家にアドバイスを受けながらのトレーニングが良いということでしょう。ひたすら走りこんだりうさぎ跳びをするなどの方法は前時代的で理にかなっておらず効率が悪いようです。
プロ野球でも、巨人軍の選手のウエイトトレーニングの指導を、世界ボディビル選手権80㎏以下級2016年世界王者の鈴木雅氏が行うことが先日報道されました。筋トレをする人には分かると思いますが、やたらめったらトレーニングしてもボディビルダーのような体にはなりません。ボディビルダーは食事や栄養、筋肉の構造やピンポイントに筋肉に効くトレーニングなど、豊富な知識と技術が必要とされるのです。

筋トレには自尊心を高めたり保つ機能があるそうです。
Cicolloら（2016）の研究によると、男性の筋力の強さと自尊心の高さには正の相関関係が見られました。男性においては筋力の強さと自尊心の高さが比例すると言えるのかもしれません。この研究では、女性の筋力と自尊心の間には相関関係が見られませんでした。
先に紹介されていたニューカッスル大学のグループの「魅力的なカラダとは？」をテーマにした論文によると、男性が理想とする男性の体型と、女性が理想とする男性の体型は非常に類似していました。ということは少なくとも、男性は自分が理想とする体型を目指して筋トレすれば、結果的には女性が理想とする男性の体型に近づくと言えます。
ただし、男性女性に関わらず偏った食事制限などによる急激な体重減少を伴ったダイエットや過剰な低体重を目標としたダイエットは、心身ともに悪影響を与えますので行わないようにしてください。バランスを考えた食事と筋トレを併用することで筋肉量を増やし基礎代謝をあげることを目指してください。何より継続することが大切です。例えば1ヶ月1㎏の減量でも1年続ければ12㎏の減量になりますし、ゆっくりと筋肉量を増やしていくことでリバウンドもしにくくなります。無理をすれば1ヶ月に5㎏以上減量することも可能ではありますが、極端な食事制限などのストレスをかかえ、心身ともに疲れ、挙句にリバウンドしてしまっては何もなりません。

アメリカではプロのボディビルダーは自分たちのことを彫刻家と呼ぶそうです。
外出自粛やテレワークなどで運動不足になっている人も多いことでしょうから、新型コロナウイルスのストレスから解放された時のために、心も体も健康な安定した状態を維持しながら、ゆっくりと自分の理想の体を作り上げていきましょう。