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痛みの声を聴け 前篇

? 若いときは二日酔いの頭痛しか知らなかったのに、年をとるにつれて痛みと付き合う機会が多くなった。

 十年も前、勤め先に急いでいたら、突然右の膝に殴られたような衝撃を感じ、歩けなくなった。膝関節の半月板が切れたのだった。

 昨年二月十日左臀部から下肢にかけての激痛で目をさました。立つことはおろか、寝て反側転々もできず往生した。この脊柱管狭窄症による痛みは四股を踏んで直したが、全き健康感というものは失われたのである。

 人間にとって痛みとは何なのだろう。そんなことを思う機会が増えてきたころ、外須美夫九大教授の『痛みの声を聴け』を読んだ。彼は麻酔科医であり、歌人であり、マラソン走者であり、思索する人である。

 痛みは「多面体」であって、宗教などの文化により、病気の種類により、時代により、個人の世界観によりさまざまな経験の仕方があるのを、彼は豊富な実例をとおして説明している。

 たとえば旧約聖書に出てくるヨブの話に象徴されるように、痛み(pain)は、語源的には、人間の原罪に対する罰(penalty)であるとも解釈されていた。一方日本語では、「痛み」は形容詞の「いたし」(はなはだしい、ひどい、激しい)にたどることができるという。「いたく感心しました」などは今も使われている。

 

 同書から三例を紹介しよう。

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 脊椎カリエスの痛みは、正岡子規が『病床六尺』で歴史に残る描写をしている。壮絶としか言いようがない。

身動きができなくなっては、精神の煩悶を起こして、ほとんど毎日気ちがいのような苦しみをする。

もはやたまらんので、こらへにこらへた袋の緒は切れて、遂に破裂する。もうかうなると駄目である。絶叫。号泣。ますます絶叫する、ますます号泣する。

その苦しみ痛み何とも形容することはできない。むしろ真の狂人となってしまへばらくであろうと思ふけれどもそれもできぬ。

誰かこの苦を助けてくれるものはあるまいか、誰かこの苦を助けてくれるものはあるまいか。

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 しかし子規は、この痛みの中で死期が迫っても俳句の諧謔精神を失っていない。絶筆にそれが現れている。

痰一斗 糸瓜の水も 間にあはず 

をととひの へちまの水も 取らざりき

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 次いで、がんのもたらす精神と肉体の痛みに対しても、俳句のユーモアが効果をもたらすのは江国滋が示している。

立春の 翌日に受く がん告知

残寒や この俺が この俺が癌

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 食道がん摘出術の痛みややさしい看護師へ感謝。

春暑し 傷痛し 胸息苦し

カーディガン、 ナースはみんな やさしくて

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 医師の患者への対応には思いやりが足りない。苦痛を感じるのは、まるで患者の所為であるかのような口ぶりだ。しかも術後縫合不全が生じ、再手術が必要になる。

惜春の また傷ついて いるところ

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 再手術は終了するが、やがて手術の傷跡が「鉄の輪っかで締め付けられるように」重く痛くなる。そして転移が明らかになる。

六月や 生よりも死が 近くなり 目にぐさり 「転移」の二字や 夏さむし

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 右腕の病的骨折を起こし、その腕が完全に役に立たず、腕の激痛は耐え難い。

断末魔とは このことか ビール欲し

死に尊厳 などといふもの なし残暑

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 いったんは退院するが、病状が急速に悪化し再入院。辞世の句が残される。がんに対しては敗北したかもしれないが、苦悩に対しては勝利宣言ではないだろうか、と痛みの専門家である著書は述べている。

おい癌め 酌みかはそうぜ 秋の酒

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