ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)後篇 ~コミットメント~
前回はACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)のアクセプタンスについてお伝えしました。(まだ読んでない方は是非読んでみて下さい!)
ここまでは苦痛との向き合い方についてお話してきましたが、ACTにはもう一つ重要なポイントがあります。それは、自分の人生を自分自身で運営していく、ということです!
「自分の人生は自分が運営するしかないんだから、当たり前のことじゃないか!」そう思われた方もいると思います。全くその通りです。しかし、ここで本当にそうかどうかもう一度考えてみたいと思います。みなさんは自分が今望む毎日を送っていますか?それとも未来の心配事や過去の嫌な思い出にとらわれて、本当はやりたいのにできないことややらないようにしていることがありますか?あなたが人生をどう生きていくかを決めているのはあなた自身でしょうか?それともあなたの苦痛でしょうか?
ACTでは、夢に向かって自分で人生を歩んでいくことをコミットメントと呼んでいます。多くの場合、私たちは「やる気さえ出ればまたできるようになる。」「体調さえ元に戻れば頑張れるのに…」と考えると思います。確かにそういう側面もあるのですが、実は心と体はお互いに影響を及ぼしあうものなので、ほんの少し体が重い時でも思い切って体を動かしてみたら元気が出てきたり、いまいちやる気が出ないなぁという時でもとりあえずやってみたらだんだんとやる気が出てきたり…。単に「やる気」というものが湧いてくるのを待つよりも、できることから始めることで自分で「やる気」を作り出すことができるのです。思い出してみてください。小さいころに逆上がりの練習をしたとき、学芸会やおけいこ事の発表会、受験勉強、小さなものでもなんでもいいのですが、何か目標や目指すものがあったときには、それがない時よりも力が湧いてきた経験はないでしょうか?
前に記したとおり(アクセプタンス編をご覧ください)、私たちの苦痛をなくすことや無視すること、減らそうとすることは、大変な時間と労力をかけてしまう割にあまりうまくいきません。さらに、それらの苦痛が無くならない限りは前に進めないと考えてしまうと、途端に私たちの人生の主導権は苦痛に譲り渡されてしまうことになります。ACTでは、苦痛に対してしっかりと気づきを向け、そしてそれを十分にアクセプタンスできるように練習をし、苦痛がそこにあったとしても、今この瞬間からあなたの夢に向かってあなた自身が人生を歩んでいくためのコミットメントをどんどん増やしていくことを目指していきます。それは簡単なことではないでしょう。先程思い出してもらった場面をもう一度思い返してみると、逆上がりができるように毎日練習しているのに、手の皮がむけて筋肉痛になってあちこちが痛かったり、友達が自分よりも早くできるようになってしまって焦ったり、いつまでもできなくて練習に付き合ってくれた家族や友達をがっかりさせてしまっている気がしたり…夢や目標を達成するために進むことを邪魔する様々な障壁(バリア)や罠(トラップ)が次々と現れるからです。そのようなときには、それらの邪魔によって生じている苦痛に再度気づきを向けアクセプタンスを深めていく…ということを繰り返していきます。
ここでご説明した事柄は、ACTの中のほんの一部です。また読んだだけでは実際に何から始めたらいいのやらわからないかもしれませんし、「本当かな?」と疑問を感じたり、もしかしたら誤解を与えてしまった部分もあるかもしれません。もしも興味をお持ちになられましたら、是非赤坂クリニックの熊野宏昭先生の日曜日のカウンセリングにいらっしゃって下さい!
(*只今カウンセリング初めての方は少々お待ち頂いております。)
いきなりカウンセリングに行くのはちょっと怖いな…、もう少し詳しく知りたいな、と思われた方は、以下の書籍もおすすめ致します。
『不安・恐れ・心配から自由になるマインドフルネス・ワークブック
―豊かな人生を築くためのアクセプタンス&コミットメント・セラピー―』
出版:明石書店
著者:ジョン・P・フォーサイス、ゲオログ・H・アイファート
監修:熊野宏昭、奈良元壽、西川美樹
『ACTをはじめる
―セルフヘルプのためのワークブック―』
出版:星和書店
著者:スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス
翻訳:武藤崇、原井宏明、吉岡晶子、岡嶋美代
『マインドフルネスそしてACTへ
―二十一世紀の自分探しプロジェクト―』
出版:星和書店
著者:熊野宏昭