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コロナ禍の不安症臨床ーわれら、かく闘えり(その3)ー(ケセラセラvol.105 坂元薫)

医療法人和楽会 心療内科・神経科 赤坂クリニック 院長 坂元薫

今回は、前回に引き続き、診療の現場で私が見てきたコロナ禍がもたらしたメンタルヘルスへの影響を見て行くことにします。今回は、不安症(パニック症、社交不安症)の臨床からさらに話を拡大できればと思っています。
前回まで見て来たように、コロナ禍は、不安症の臨床には明らかに大きな悪影響は与えていないように思われましたが、これは厳密な統計学的解析を経ない私の全く個人的な印象にすぎません。今後の精緻な検証が必要なことは論を俟ちません。
とりわけ通院中断例、脱落例の中に、COVID -19感染症拡大による不安症の悪化例が隠れている可能性は否定できないと考えています。

前回は、過去5年以内に初めてうつ病と診断され1ヵ月以上通院した成人464名を対象にしたWEB調査(インテージヘルスケア社、2020年9月25日~10月1日)で、その7%がむしろストレスが減ったと回答していたことをご紹介しました。
しかし、コロナ禍で、ストレスが減ったひとはやはり少数派のようです。上述のWEB調査では、調査対象464名のうち58%がコロナ禍でストレスが増えたと回答しています。その理由として、「経済的な不安のため(59%)」「感染への不安のため(50%)」「外出を自粛しなければならなかったため(48%)」「将来の失業の不安(30%)」などが挙げられています。
こうしたストレスがもたらすメンタルヘルスへの悪影響が気になるところです。

米国でのCOVID -19感染症拡大前と拡大中のデータを比較した最近の調査では、COVID -19感染症拡大とその感染予防策が米国の一般的な成人の抑うつ症状(憂うつな気分や意欲の低下などの症状)の有症率を3倍にしたと報告されています(1)。
またキプロス島成人1642人を対象にCOVID -19感染症流行と不安・うつ症状有症率と危険因子を調査した研究では(2)、軽度不安が41%、中等度~重度不安が23.1% に見られ、軽度抑うつは48%、中等度~重度抑うつは9.2%に見られると報告されています。また不安・抑うつのリスク因子としては女性、若年(18~29歳)、学生、失業、精神疾患の既往などが指摘されています。 また予防策準拠レベルが高いほど(つまり感染対策をきちんととっていればいるほど)抑うつスコアは低いが、個人衛生維持への不安が増加 することも示されました。
この点は中国の医療従事者における調査(3)で、問題焦点型コーピング行動(手洗いやアルコール消毒、3密を避けるなど)をきちんと実行することが抑うつや不眠の改善に良い可能性が指摘されていることとほぼ一致する結果と言えましょう。ただこうした結果は、因果関係が逆で、抑うつスコアが低かったり、不眠症状がないひとほど感染予防対策をきちんととれているとも解釈できるかもしれません。
これらは、抑うつ症状や不安症状についての調査ですが、うつ病の発生率はどうなったのでしょうか。米国の5000人を対象としたCOVID -19感染症流行前後のうつ病有病率調査(4)では、8.4%(2017年~2018年)から14.4%(2020年4月)への増加が見られています。うつ病になるひとがおおよそ倍近くに増えたということになります。特に若年成人は他の年齢層と比較して、うつ病有病率の顕著な上昇が見られたことも明らかにされています。

一方、新型コロナウイルス感染症を発症したひとの精神状態はどうなっているのでしょうか?
米国のCOVID -19罹患患者62354人の調査(5)によると、感染診断から90日以内に5人に一人が何らかの精神疾患(不安症、うつ病、不眠症)を発症していたと報告されています。また認知症の発症頻度の増加も認められています。さらに他の呼吸器疾患やインフルエンザと比較すると精神疾患と診断される確率が2倍であったともいいます。 精神疾患の既往のある人はない人に比べてCOVID -19の感染リスクが65%高かったことも報告されています。

米国の成人1010人を対象にCOVID -19感染症流行とうつ・孤独の関連について調査した研究(6)によれば、頻繁なリアルな対面によるつながりは抑うつ症状や孤独感の低下と関連したが、頻繁なリモートによるつながりでは、この関連は認められなかったと報告されています。
つまりリモートによる対面は頻回であっても、抑うつ症状や孤独感を十分に癒してくれないといことが示唆されたわけです。昨今、リアルな対面診察によらないオンライン診療が注目されて、もてはやされてきているようにも思われますが、とりわけこころの診療場面ではこうした結果も考慮しておく必要があるように思います。

表1には、コロナ禍でメンタルヘルスへの影響を受けやすいハイリスク者が挙げられていますが、そのうちとりわけ深刻な人々は11に挙げられた収入減が著しい人々でしょう。
度重なる緊急事態宣言などの発出により、時短営業や休業を余儀なくされて経済的打撃を受けた人々やコロナ禍による勤務先の経営状況悪化によりリストラや雇止めをされてしまう方も少なくありません。
そうした経済的不安、困窮によるうつ病や自殺の増加という極めて憂慮すべき問題が生じていることが今後のわが国のメンタルヘルスの最も重大な課題のひとつとなると思われます。

我が国では、昨年の10月頃より女性、それも特に若年女性の自殺率の急上昇が指摘されています。
上で見てきた海外の調査でもCOVID -19感染症拡大による不安や抑うつ発症の危険因子は、女性、若年であることが繰り返し指摘されてきましたが、我が国の動向にもこの傾向が見て取れるようにも思われます。
今後、こうした経済的困窮を契機とするうつ病や不安を伴ううつ病の人々への対応は、単に医学的治療のみで済む問題ではなくなることを肝に銘じておく必要があると強く考えています。

文献
1:Etmann C,et al: JAMA Network Open 2020
2:Solomou I et al. Int J Environ Res Public-Health, 2020
3:Guo J et al, Int J Environ Res Public-Health, 2020
4:Daly M et al, J Affect Disord, 2020
5:Taquet M., et al, Lancet Psychiatry 2021
6:Rosenberg M et al,Soc Psychiatry Epidemiol, 2021

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