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パニック症の脳内活動 治療前非発作安静時 ―大学院時代のPET研究―(ケセラセラ2024年1月号 vol.119)

医療法人和楽会 横浜クリニック
院長 境洋二郎

私が東京大学心療内科の大学院生だった際、パニック症(パニック障害)の患者さんを赤坂クリニックで募集し、PET(ポジトロンCT)検査を用いて、脳内活動を測定する研究を行いました。そこでは、薬物療法を行ってない治療前のパニック症の方の脳内のグルコース代謝を、パニック発作を起こしてない状態で安静時に測定し、パニック症群12例と健常対照群22例との比較を行いました。パニック症群で、グルコース代謝が亢進、つまり脳内の活動が活発であった部位を黄色く示します(図1-2)。その結果、扁桃体、海馬、視床、脳幹(橋・延髄)、小脳で活動亢進領域を認めました。逆に、パニック症群で、グルコース代謝が低下している領域はありませんでした。


図1 パニック症群でグルコース代謝亢進部位 1


図2 パニック症群でグルコース代謝亢進部位 2

これにより、ケセラセラ2023年9月号にも示しました「パニック症の神経解剖学的仮説(図3)」で提唱されている多くの部位において、実際のパニック症の患者さんで、パニック発作を起こしてない状態であっても、神経活動が高まっていることが示されました。つまり、発作を起こしておらず、外見では分からない状態であっても、脳内の活動を見ると、パニック発作や予期不安が生じやすい状態であると言えます。


図3 パニック症の神経解剖学的仮説

参考文献:Sakai Y, Kumano H, Nishikawa M, Sakano Y, Kaiya H et al. Cerebral glucose metabolism associated with a fear network in panic disorder. Neuroreport 2005; 16(9):927–931.

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