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子どもの不安症を見逃さない!①(ケセラセラ2024年7月号 vol.125)

医療法人和楽会 理事長 貝谷 久宣

1.はじめに

不安症は、人生のうちで最も早く発症する病気です(図1)。そして、不安症はよくある病気です(発症率は一般人口の約30%)。また、不安症は家族性に発症しやすい病気であり、不安症の家族(親、同胞、子)では一般人口に比べ、不安症の発症率が数倍高いことが示されています(Kesslerら、2005)。たとえば、パニック症を例にとると、その一般人口での発症率は100人に4~5人ですが、患者さんの親、兄弟、子どもでの発症率は100人中8~17人になると言われています(Kesslerら、2005)。

図1 不安症、ADHD、うつ病および物質使用障害の発症年齢

不安症の子どもは大人のような典型的な不安症の症状を示しません。それは自分の精神状態を大人のように言葉ではっきりと表現できないからです。その代わりに、親にしがみついたり、不機嫌になったり、泣き叫んだり、かんしゃくを起こしたり、立ちすくむといった行動によって不安症の苦痛を示します。また、吐き気や頭痛などといった不安の身体化症状を訴えます(表1)。その結果、学校へ行き渋る、不登校、家から出られない、仲間と遊べない、など明らかな生活上の支障が出てきます。

表1 不安の身体化症状

① 吐気
② めまい
③ 息苦しさ
④ たちくらみ
⑤ 頭痛
⑥ 胸のどきどき
⑦ 腹痛・下痢
⑧ トイレの回数が増える(大・小便)
⑨ 匂いに敏感
⑩ 食事(給食)が摂れない

不安症の子どもを小児精神科へ連れて行くと、しばしば発達障害という診断が下されます。ただ、その診断で治療を受け、上記のような生活上の支障が治っていくのであればよいのですが、そうでないケースもしばしばみられます。そのような時は不安症の併発を考える必要があります。何故ならば、不安症は注意欠陥・多動症(ADHD)に併発していることが多いからです。
たとえば、図2を見ますと、ADHDが無い人の社交不安症の頻度は15%前後ですが、ADHDが有る人の社交不安症の頻度はその倍以上の35%前後です。
反対に、社交不安症の62%はADHDが有るという報告があります(Koyuncuら、2015)。発達障害と言われている人たちの一部には、不安症の治療をすると生活の質が劇的に改善することがしばしばあります。そのわけは、不安症の治療は発達障害の治療よりもその効果率が高いからです。

図2 成人ADHDの併発精神疾患

 不安症の治療は、薬物療法と認知行動療法です。薬物療法では、選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)がファースト・チョイスです。子どもでも服用可能な製剤があります。認知行動療法は、子どもの不安症に詳しいカウンセラーが対応します。
認知行動療法は患児が毎回受診する必要はなく、お母さんやお父さんが子どものための認知行動療法を受けます。西欧諸国ではこのやり方はすでに広く行われています。医療法人和楽会でも、最近この親への認知行動療法を始めました。

「子どもの不安症を見逃さない」は、これから数回、シリーズでお送り致します。
次回は、「子どもの不安症はどんな病気があるの ―パニック症の事例」の予定です。

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