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本の紹介『嫌われる勇気』(ケセラセラ vol.80 春)

医療法人 和楽会 赤坂クリニック 院長 吉田 栄治

 

前回のケセラセラで、毎週土曜日は、知り合いの総合病院に車で仕事に行っていまして、その通勤の際にカーラジオから流れてくるトーク番組「木村達也 ビジネスの森」をいつも聞いているというお話をしました。先日は(といっても既に3ヶ月ほど前になりますが)、その番組に『嫌われる勇気』という本の著者である哲学者の岸見一郎さんがゲストで呼ばれ、この本に関するトークを2週にわたってされていました。

この本は、1年ほど前からベストセラーになっていて、ご存知の方も多いのではないかと思いますが、実際、私も、ちょうど1年ほど前に、ある患者さんからこの本のことを紹介されました。「先生、この本、とても面白くて参考になりましたので、ぜひ読んでみてください」と。その後も、たまたま数人の患者さんからこの本を読んだというお話があり「とても参考になった」という意見をお聞きしていました。ただその中には、「知り合いからすすめられて『嫌われる勇気』という本を読んだのだが、とても厳しいことが書いてあって、落ち込んでしまった」と仰る方もおられました。

この本は、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)についてまとめられたもので、人生に対し疑問を抱く青年と、アドラー心理学を信奉する哲人との対話という形で物語は進みます。「人生はシンプルであり、人はいまこの瞬間から幸せになることができる」と説く哲人と、それに反発し異を唱える青年が対話を積み重ねていくことでアドラー心理学の真髄に迫っていきます。この本の読者は、この青年の立場になって、いろいろな疑問や反発を感
じながら、この哲人との対話を進めていくことになると思いますが、しばしば、にわかには受け入れがたい議論が展開されます。

 
まず哲人は、過去のトラウマなりの原因によって今の症状があるというフロイト的な「原因論」を否定し、いま現在のこの症状は、何らかの目的があって存在しているという「目的論」という立場について説明します。例えば過去の親子関係、あるいは学校や職場での経験などが原因で引きこもりになっていると思われる青年の場合、過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を考える、つまり「不安や恐怖のために外に出られない」のではなく、「外に出たくない」という目的が先にあって、その目的を達成する手段として、不安や恐怖といった感情を作り出していると説明されます。外に出ないことで親の注目を集めることが出来る、あるいは現実の困難に直面することを避けることが出来る、仕事が出来なくても自分に言い訳をすることが出来る、などの半ば無意識的な目的があるというわけです。

 
アドラー心理学においては、「トラウマ」という考え方を明確に否定します。いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない、われわれは経験の中から目的にかなうものを見つけ出す、われわれは経験によって決定されるのではなく、「経験に与える意味」によって自らを決定するのであると。われわれは過去の経験に「どのような意味を与えるか」によって、自らの生を決定しているのだと、主張します。過去にどんな出来事があったとしても、そこにどんな意味づけをほどこすかによって、現在の在り方は決まってくるのだと。アドラーの言葉によれば「大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである」と。

 
ある意味、厳しい言葉だと思います。ただ哲人は、本人が悪いと言っているわけではなく、一歩を踏み出す勇気がないのだと説明します。人は皆、人生における思考や行動の傾向、つまり「世界」をどう見ているか、また「自分」のことをどう見ているか、といったライフスタイルというものを持っており、自分でこのライフスタイルを選択していて、これを変えようとしない。自らに対して「変わらない」という決心を常に下しているのだと指摘します。新しいライフスタイルを選んでしまったら、新しい自分に何が起きるかわからない、だから不便で不自由であったとしても、今までのライフスタイルのほうが安心だというわけです。人は「変われない」のではなく「変わらない」という決心を繰り返している、新しいライフスタイルを選ぶ勇気が足りていない、「幸せになる勇気」が足りていないのだと哲人は説きます。
アドラーの「目的論」によれば、これまでの人生に何があったとしても、今後の人生をどう生きるかについて何の影響もない。だから、自分の人生を決めるのは、「いま、ここ」に生きるあなたなのだと、哲人は勇気づけます。

 
一歩を踏み出しても、まわりから評価されないかもしれないし、嫌われるかもしれない、それでも前に進
むことが出来る。だから「嫌われる勇気」を持って前に進もうと、筆者は言っているのだと思いました。
哲人と青年の対話はまだまだ続きます。すべての悩みは「対人関係の悩み」である、劣等感は主観的な思い込みである、相手を屈服させようとする「権力争い」には突入しない、他者から承認されることを求めない、自分の課題と他者の課題とを分離する、対人関係のゴールは「共同体感覚」(いわば仲間意識)、そのためには「自己への執着」を「他者への関心」に切り替えていく、誰もがここに存在しているだけで価値がある、「自己肯定」ではなく「自己受容」、そして「他者信頼」と「他者貢献」、ダンスするように生きる、すなわち「いま、ここ」を真剣に生きる…。

 
この本については、もう少し書きたいことがあるのですが、続きは次回で…ということにします。興味を持たれた方は、実際にこの本を手にとって読んでみられたら良いかと思います。なかなか承服できないと思う部分もあるかもしれませんが、この物語の青年と同様、哲人の言葉に対して疑問や反発を感じながら、読んでいかれたらいいのではないでしょうか。そのなかで一つ二つ、ああ、そういう見方も出来るのか、と思えるものがあれば、変わっていくきっかけになるものが見つかるかもしれないと思います。

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