遊ぶ(2)(ケセラセラvol.82)
医療法人 和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井 宏明
洒落言葉
部下の仕事ぶりに一言、言いたいとき、直接的に言うと角がたつことがあるでしょう。言い方に工夫し、ユーモアで包みながら注意できれば雰囲気を保ちながら目的を達成できるはずです。和を重んじる日本では、昔からそんな言い方を作ってきました。
「雪隠の火事」…「やけくそ」を意味します。雪隠は昔の言い方でトイレのこと。昔のことですからくみ取り式です。
トイレが火事になれば糞が焼けるから、すなわち自棄糞(やけくそ)。
「うどん屋の釜」…「言うばっかり」を意味します。うどん屋の釜は常に煮立っています。「湯ばっかり」なので「言うばっかり」。実際の行動が伴わない大言壮語のことを意味する洒落言葉には他にも「大晦日の髪結」「乞食のお粥」「風呂屋の釜」などがあります。
「百足の支度」…「手間がかかる」を意味します。足が100本ある百足が外出する準備をしたら靴をはくだけでも相当時間がかかります。つまり手間取る。新潟の昔話に元をとったようです。
漢字遊び
漢字の書き間違いも遊びにできます。他の人が気づかないようにしてみるわけです。
つぎの単語はどうでしょうか?
週間紙の買売
事時門題の解設
火丼
おかしいところにすぐ気がついたでしょうか?
弁慶読み、句読法
「弁慶が、なぎなたを持って」と読むべきところを「弁慶がな、ぎなたを持って」のように区切りを変えるものです。「カネオクレタノム」の区切りを変えるとどうでしょう?同じ文をまったく違う意味に取ることができます。答えは文末に。
文章の順番を変えて遊ぶ
次の文章を読んでみてください。どちらの女性が真面目な人にみえるでしょうか?
1 家庭に恵まれなかったキャバ嬢が、昼は大学で真面目に学んでいます。
2 昼は真面目な女子大生が、夜はキャバで働き、それを家庭に恵まれないせいにしています。
どちらも書いてあることは同じことなのですが、受け止め方が違います。
娘の変顔
17年前、「幼稚園で覚えたの、この顔、写真に撮って!」と言われたときにとった写真です。顔をつくるまでの過程が面白く、見るたびに私も笑っていました。他人にも見せたくなり、当時の私の個人ホームページにアップしたほどです。でも、知り合いから、「お子さんの個人情報を外に公開しないほうがいいわよ、何があるかわからないから」と心配してくれる人がいて、削除してしまいました。
今は、この子も大学生、公開したところで、この顔から今の彼女を結びつけられる人はいません。本人のOKもとれたので古い写真をまた出してきました。いま、見なおしても、やっぱり何の意味も無い、役に立たない変顔です。だからこそ楽しいし、面白い。この子がいて良かった、私も生きていて良かったと思えます。
この子が変顔で遊んでいた時期、私自身、楽しいことばかりではありませんでした。仕事や家族のことなどいろいろありました。それでもこうやって変顔を見ると楽しい思い出もあったなと思い出すことができます。
人生に何か目的を持って日々を無駄なく過ごすことも必要なことでしょう。でも、後から振りかえると、何の役にも立たない暇つぶしにしかならない遊びこそが生きる意味を与えてくれるようにも思えます。
答え
「金送れ、頼む」と「金をくれた、飲む」
参考文献
高橋康也・言語遊戯・東京…日本ブリタニカ:1979まさに何様・闇から神谷・さかさ言葉「回文」のすべて・東京… カットシステム:1998
相羽秋夫・しゃれことば事典・大阪市…東方出版:2014