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ビーイング・モータル(Being Mortal)死すべき定め (ケセラセラ vol.83 冬)

医療法人 和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井 宏明

 

去年の今頃から、この1年間、毎日“死”を考えています。正確に言えば、死についての本の翻訳をしています。インド人二世の外科医、アトゥール・ガワンデが書いたBeingMortal(死すべき定め)です。とても重たい本です。一章を翻訳すると、しばらく他のことが手に付かなくなるような読後感があります。死を好んで口にする人はありません。しかし、死がなければ小説や刑事ドラマ、事件ニュースが成り立ちません。死は人目を引きます。そして、この本を翻訳することで、死を考えることがよりよく生きるために必要だとつくづく感じるようになりました。逆に言えば、どういう死に方をしたいのかを生きているうちに考えていないのが問題なのだと思うようになりました(もちろん死んでからでは遅すぎです)。跡継ぎはどうする?お墓は?財産や遺品は?などが決まっていないと“遺産争族”などとドラマになってしまいます。

死んだ後のことは「私は知らない、全部人任せ」と思う人もいるかもしれません。しかし、死は一瞬ではありません。何年と長い過程を経て衰え、死んでいきます。その間に、病院や施設、家か?、一人で静かにか/家族に囲まれて賑やかにか?、身体中を管に繋がれるか/自分の口で食べられなくなったら終わりにするか?、どれだけ苦しくてもできるだけ長く生きるか/苦しいより楽に早くか?、こうした選択肢が最後の何年かの間にひっきりなしにやってきます。昔は考えられなかったような選択肢が今はたくさんあり、そして“正しい現代的な死に方”というようなガイドラインはありません。Being Mortalの中では、おおよそ各章で二人ずつが亡くなります。その十数人の死に方は本当にさまざまです。ガワンデの祖父のように100歳を超えた最後の歳まで馬にまたがって自分の農場を見回り、最後は転倒して翌日亡くなるという死に方は素敵なのですが、昔話です。35歳で夫と赤子を残して肺がんで亡くなったサラ・トーマス・モノポリのように検査と放射線療法、あらゆる化学療法などの副作用に苦しめられながら、呼吸器に繋がれ、最後は呻きながら逝く死に方は現代的ですが、それを選びたい人はいないでしょう。

翻訳中の一部から引用します。

生まれ落ちたその日から私たち全員が老化しはじめる。この人生の悲劇から逃れるすべはない。この事実を理解し、受け入れている人もいるだろう。私の場合も、亡くなったり、亡くなりつつある担当患者が夢に出てくることはもう起こらなくなった。しかし、だからといって、治せないことに対処する方法を身につけたというわけではない。治せる能力ゆえに成功している専門職に私はついている。治せる問題ならば、医師はそれに対して何をすればよいのかを知っている。治せないということに対して十分な答えを医師が持ち合わせていないことがトラブルや無神経さ、非人間的な扱い、言語を絶する苦しみの原因になっている。

死すべき定めを医学的経験にするという実験はまだ二、三十年の歴史しかない。まだ未熟なのだ。そして実際の結果は、実験に失敗しつつあることを示す。

 

私は人の死に接することが多い職業についています。両親も見送りました。死については多く知っているはずなのですが、それでも死について考えることが足りていません。訳すうちに、以前働いていた精神科病院で看取った患者さんたちのことを考えるようになりました。医師の業務として処置し、家族に説明し、死亡診断書を書いていました。当時は、死期が近いと分かっている患者さんに「最期の日をどう送りたいか?」と聞くような考え自体がありませんでした。今は、その患者さんたちは本当に病院で死にたかったのか、最後の日々をどう送りたかったのか、と考えます。そして、そのような疑問を全く持たなかった当時の自分について申し訳なく思います。

 

この本は副作用があります。読むと老化の自覚が進みます。引用しましょう。

目はまた別の理由でやられていく。蛋白が結晶化した水晶体は高い耐久性を持つが、時間が経つにつれて化学的に変化し、柔軟性を失う。それが40代に大半の人が起こす老眼につながる。同様に色が黄変する。白内障(加齢や紫外線への過度な暴露、高コレステロール血症、糖尿病、喫煙などによって水晶体に起こる白っぽい濁り)が起きなくても、網膜に到達する光の量は、健康な60歳でも、20歳の場合の3分の1になる。

 

2014年の夏にここを訳してから、私も自分の目の老化をはっきり自覚しました。前から分かっていたのですが、知らない振りをしていました。35年間のコンタクトレンズ生活とお別れして、二重焦点メガネにすることにしました。これでレストランのメニューの細かな字が読めなくて適当に注文するなんてしなくてすみます。

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