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赤ちゃんを抱っこする(ケセラセラvol.87)

医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井宏明

 

「クリニックの院長はストレスたまりませんか?」

メンタルクリニックの院長の仕事は他人の悩みの話を聞くことから始まります。おそらく誰でも他人の悩みを聞くのはあまり楽しいことではありません。聞き上手を自慢している方でも、朝から夕方まで数十人を相手しなさい、と言われれば「大変!」と思われるようです。私自身、20年間国立病院で働いているときに診ていた患者さんの数は多くても一日に30人ぐらいでした。一日の患者さんの数を知ると、知り合いはもちろん、受診される患者さん当人からも「ストレスたまりませんか?」と聞かれます。9年前、なごやメンタルクリニックに来たばかりの私もそう思っていました。そして、次にくる質問は「先生のストレス解消法は?」です。

結論から言えばなんとかなるものです。名古屋に来てから9年がたちました。強迫症など最初の受診の理由になっていた症状が1/3以下になり、薬の種類も減って抗うつ薬1種類だけか、抗不安薬などと合わせても2、3種類ぐらいになり、薬の調整も不要になった患者さんが増えてきました。こうした患者さんは症状を治すためではなく、現状維持― 再発のリスクを下げるため― にクリニックに来ていただいていることになります。

安定している患者さんが増えてくるにつれて、悩みを聞いてストレスがたまるどころか、反対に“おめでた”を聞かせてもらうことが増えてきました。この1年間でおおよそ10人の患者さんが嬉しいニュースを知らせに受診されます。私は子どもが大好きです。診察に赤ちゃんや小さなお子さんを連れてきてくださったら、お願いして私の腕にその宝物を抱っこさせてもらっています。お母さんや家族にお願いして写真を取ってもらい、それを私のFacebookのページにアップして、後からみるのも楽しみです。成長に合わせて二度三度出てくるお子さんも含めれば、毎月2、3人の写真を載せています。だいたい7割ぐらいのお子さんはおとなしく私の腕に抱かれてくれます。1割は最初から駄目でお母さんの胸から離れず、2割は泣いてしまいます。写真を見てみてください。私としては打率7割は良いほうだろうと思っています。泣いて嫌がる子をあやして私の腕で落ち着かせるのが楽しみです。

赤ちゃんの写真はお母さんの許可をいただき、一般に公開の設定でアップしています。
Facebookアカウントにログインする必要がありますが、友達申請は不要です。
https://www.facebook.com/hiroaki.harai

 

私のストレス解消法は?

患者さんが多くて混み合っているときに、抱っこしたり写真をとったりしていると時間を取ってしまい、他の待っていらっしゃる患者さんにはちょっと申し訳ないです。しかし、やっぱり連れてきてもらった赤ちゃんを抱っこできるとその日は幸せです。病気がよくなった、おかげさまでこんなかわいい子どもにも恵まれた、と患者さんが私に幸せを分けにきてくださっているのですから。

 

抗うつ薬と妊娠・授乳

自分自身のことであれば、多少の副作用はあったとしても我慢できる範囲は我慢し、不安や強迫が減るならば薬を飲むほうが良いと思う方が多いでしょう。ところが自分に、ではなく、お腹の赤ちゃんに薬の影響が出るかもしれないと考えると、薬は飲まずに不安や強迫を我慢するほうが良いと思う方が多いのではないでしょうか?赤ちゃんが生まれ、離乳もしてから薬を飲めば良いのではないかと周りも言うかもしれません。とにかく命に関わることでない限り、余計なものには手を出さないほうが良いと妊娠中のお母さんは考えがちです。私自身も以前は、全部の薬を止めてから、妊娠をするようにとお話していた時期がありました。
この10年間、抗うつ薬、特にSSRIについての副作用のエビデンスが明らかになってきました。妊娠や出産、授乳する女性がSSRIを飲んだ場合でも、流産や先天異常、成長障害は飲まない場合と変わらないことがわかってきました。服薬中の女性で妊娠が分かったとしても、薬をやめる必要はないし、胎児の検査を受ける必要もないのです。
妊娠、出産を通じて薬を続けることには実はメリットもあります。反復性のうつ病や不安症、強迫症の場合、出産は悪化の大きなきっかけになります。マタニティーブルーという言葉は聞かれたことがあるでしょう。もともと不潔恐怖はなかった方でも哺乳瓶は特別に消毒したいでしょう。加害恐怖はなかった方でも赤ちゃんを抱き上げるときに首を折ったり、落としたりするのではないか?と気にするでしょう。赤ちゃんのウンチや吐物が気になる人もいるでしょう。
以前にうつ病を起こしたことがあるが、今はすっかり治っていて、現在妊娠中の女性に対してSSRIの一つ、セルトラリンを産後直後から服用してもらうとその後どうなるかを調べた臨床試験があります1。
14人の方がセルトラリンを服用し、8人の方がプラセボ(外見がセルトラリンとそっくりで見分けがつかない、偽薬)を服用しました。プラセボを使ったのは、本当の薬かどうかが誰にもわからないようにすることで、思い込みなど心理的な理由が薬の効果に影響を与えないようにするためです。
結果ははっきりしていました。出産後から約5ヶ月間、セルトラリンを服用していた14人のうち1人だけ(7%)にうつの再発がありました。プラセボを服用していた8人のうち4人、つまり50%にはうつの再発がありました。不安症・強迫症については同じような臨床試験はまだなさそうですが、SSRIを服用しておくことで、出産後の再発・再燃を防げることはほぼ確かなようです。

 

補足

ベビーカーやおむつの替えなど荷物が多くなるのにお子さんをわざわざ連れてきてくださる患者さん、待合室でむずかったり、泣いたりする幼子を大目にみてくださっている他の患者さんに感謝しています。
妊娠中の服薬について、産婦人科医によっては違う考え方をする先生もおられます。そのような場合は相談してください。詳しい説明を加えた紹介状を書くようにいたします。

 

文献
1 Wisner KL, et. al.
Prevention of Postpartum Depression: A Pilot Randomized Clinical Trial. Am J Psychiatry. 2004;161(7):1290-1292

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