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不安のない生活(32) 呼吸について(5) (ケセラセラ vol.88 春)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

 

究極の不安の病パニック症の主な症状の一つとして息切れと窒息感がある。呼吸と不安は密接な関係である。この両者の関係について興味深い実験がなされている。指先に電気ショック用の電極が取り付けられ、今から数分以内に電気ショックが来ますと被験者に伝えられる。この人はいつ電気ショックが来るか今か今かと不安でいっぱいになる。このような不安を予期不安と呼んでいる。予期不安が高まった時呼吸数がどのように変化するかを調べながら脳波がとられた。この実験の前に不安体質についての心理検査がなされており、不安体質の程度が強い人ほど呼吸数の変化が著明であったことが分かった。また、脳波から脳内の電源を推定すると、扁桃体部と推定される脳部位の活動が呼吸リズムと同期していた。脳外科手術の時に扁桃体を微弱な電流により刺激すると呼吸数が増大することが観察されている。これは扁桃体が刺激されると脊髄にその信号が伝わり横隔膜を収縮させ吸気活動が生じるからである。この扁桃体は不安・恐怖や怒りの中枢となる脳部位である。

扁桃体で生じる情動は呼吸とお互いに影響しあっている。呼吸がゆっくりとなれば、いやな感情も薄れていく。気分が落ち着かない時やイライラしている時自然に深呼吸をすることがある。これは理にかなったことである。また、ストレスが高まり困ってしまった状態では無意識のうちにため息が出る。これも、生体の自然な反応である。

ここでこの呼吸に関するシリーズで今までに記してきたことに間違いがあることに気付いた。呼吸は自律神経ではなく体性神経系でリズム活動が保たれているということである。すなわち延髄にある呼吸中枢は血液中の炭酸ガス濃度が高くなると吸気活動を活発化させるように働いている。平常時呼吸に意識が届いていない時は延髄が呼吸の自律的リズムを形成しているが、意識的に呼吸を調節しようとすると随意神経が働き自分の意志に随った呼吸ができる仕組みになっている。瞑想中に呼吸数が低下してきている時突然強い吸気運動が出ることがある。これは呼吸中枢が起こす生体の自然反応なのである。もちろんこのような呼吸が出る瞑想は随意神経が働いた呼吸をしている瞑想なので勧められない。

さて扁桃体と呼吸は密接な関係にあることを述べたが、坐禅で呼吸を観察し続けると自然に呼吸数が減少していく、すなわち扁桃体がおとなしくなって心が落ち着いていく。この時大切なことは意識的、随意的に呼吸を変えないことである。すなわち随意神経の働き無しで自然な呼吸リズムを観察し続ける。呼吸はその時の環境に適したリズムに漸次なっていく。体を動かすことなく静座しておれば呼吸は自然に緩徐になっていく。この時の様子が天台小止観で次のように述べられている。

“初めに禅に入るときに息を調うる法とは、息を調うるにおよそ四相あり。一に風(ふう)、二に喘(せん)、三に気(き)、四に息(そく)なり。前の三を不調の相となし、後の一を調える相となす。いかなるをか風の相となすや。坐の時、すなわち鼻中の息に出入に声あるを覚ゆるなり。いかなるか喘の相なりや。坐の時、息に声なしといえども、しかも出入が結滞して通ぜざるは、これ喘の相なり。いかなるか気の相なりや。坐の時、また声なくまた結滞せずといえども、しかも出入の細ならざるを、これを気の相と名づく。息の相とは、声あらず結せずならず、出入綿々として存するがごとく亡きがごとく、身を資(たす)けて安穏に、情に悦予(えつよ)を抱く。これを息の相となす。風を守ればすなわち散じ、喘を守ればすなわち結し、気を守ればすなわち労し、息を守ればすなわち定まる。またつぎに坐の時、風気等の三相あらばこれを不調と名づけ、しかも心を用うる者にはまた患となる。心もまた定まり難し。もし、これを調えんと欲せば、まさに三法に依るべし。一には、下に著けて心を安んぜよ。二には、身体を寛放せよ。三には、気が毛孔にあまねくして出入し通洞して障礙する所なしと想え。もし、その心を細にすれば、息をして微々然たらしむ。息が調えば、すなわち衆患は生ぜず、その心は定まり易し。”

道元禅師の普勧坐禅儀には呼吸については“鼻息微かに通じ”と一言記されているだけである。瑩山禅師の坐禅用心記には次のように書かれている。

“調息の法は、暫く口を開張(ひら)いて、長息なれば即ち長に任せ、短息なれば即ち短にまかせ、漸漸に之を調え稍稍として、之に随って覚触(かくそく)し来る時、自然(じねん)に調適す。而して後、鼻息或は通ずるに任せて通ずべし。”

ここに述べたように、瞑想や坐禅では呼吸を整えることにより心が安静になる。それには良い呼吸ができるように体の姿勢をしっかりとする必要がある。このあたりのことを坐禅では調身・調息・調心といっている。

 

参考図書
本間生夫 不安と呼吸 心と社会 No.166  p86 -93 2016
小澤、福田総編集 標準生理学 医学書院 2011
関口真大訳注 天台小止観坐禅の作法 岩波書店 2011
普勧座禅儀 曹洞宗総務庁 教化部企画研修課 平成25年2月25日 第一版
坐禅用心記 曹洞宗総務庁 教化部企画研修課 平成24年3月5日 第一版

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