嘔吐恐怖症について
新型コロナ感染症への不安に対応するポイントをお伝えする記事をお届けしておりますが、今回はそこから少し離れて、嘔吐恐怖についてご説明させていただきます。
「嘔吐恐怖症」とは、嘔吐に対して、強い不安感・緊張感を抱く症状です。
そのため嘔吐を予想させるような場面を避けるようになり、対人関係や仕事といった社会生活に支障が出てしまうこともあります。
嘔吐に対する恐怖心は、「嘔吐恐怖症」に限らず、様々なパターンがあります。「嘔吐恐怖症」を含めて、以下ご説明します。
① 特定の恐怖症としての嘔吐恐怖=「嘔吐恐怖症」
主に嘔吐を誘発するような状況、例えば他人が嘔吐している場面、嘔吐を引き起こすような味やにおいがある場所を怖れ、避けようとします。
自分自身が嘔吐をして辛かった経験や、他の人が嘔吐をして苦しそうな姿を見たこと、「嘔吐はつらいもの」といった情報などがきっかけとなって発症します。
② パニック症によるもの
吐き気と腹部不快感は【パニック発作の症状】にも含まれており、パニック症の患者さんの中には、嘔吐を特に意識して不安を感じる方もいらっしゃいます。吐き気によってコントロールを失ってしまうのではないか、重篤な病気なのではないかという恐れがあります。
それにより、発作が起こった際に逃げられない場所や場面を避ける「広場恐怖」を併発する患者さんもいらっしゃいます。一方で、パニック症の診断基準は満たさないものの、吐き気を中心とした部分的なパニック発作の経験から「広場恐怖」になる患者さんもいらっしゃいます。
③ 社交不安症(対人恐怖)によるもの
自分一人のときよりも、【人前での嘔吐】を心配します。人前で吐いてしまって恥をかくことや人に迷惑をかけることを恐れており、人との食事場面を避けたり、十分に食事が出来なくなったりします。
④ 分離不安症によるもの
嘔吐や吐き気を訴えながらも、不安の対象を詳しく見ていくと、【嘔吐することを過度に恐れて耐え忍んでいる】状態ではなく、むしろ家や愛着を持つ誰かと離れることに対して強い恐れを抱くケースです。お子さんの中にはこの状態で不登校になる方もいらっしゃいます。
⑤ 心的外傷後ストレス障害(PTSD)によるもの
心的外傷となるような出来事があった時に、同時に嘔吐という現象を体験していた場合、のちに【嘔吐がトリガーとなってフラッシュバックを起こし、嘔吐やそれを想像させるものを避ける】ようになります。現象だけを見ると嘔吐恐怖症となりますが、根底にあるトラウマ体験のケアが必要です。
⑥ 強迫性障害によるもの
自分の【胃腸の状態を強迫的に心配】してしまいます。例えば、食事の内容物に消化に悪いものは無かったかを強迫的に心配する、などです。また、料理の時の儀式的な行動も特徴的です。
以上のパターンは、一見「嘔吐恐怖」として同じ症状に見えますが、その根底に存在する恐怖の種類は多少違います。したがって、この違いをしっかり見定めていくことは大切です。
その点を踏まえて、和楽会の各クリニックでは認知行動療法を行っています。
また、赤坂クリニックでは、吐き気恐怖に特化した認知行動療法(嘔吐恐怖の集中カウンセリング)も行っております。
認知行動療法(CBT)のご案内はこちら
嘔吐恐怖症でお困りの方は、ぜひご相談にいらしてください。