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恐怖条件付けの消去(ケセラセラvol.111)

横浜クリニック 院長 境洋二郎

不安症・恐怖症の恐怖条件付けの消去

「恐怖条件付け」が大きく関わっているパニック症に伴うことが多い広場恐怖症や、社交不安症、各種恐怖症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの不安症・恐怖症の治療において、その条件付けの消去が重要です。
レスポンデント(古典的)学習で恐怖条件付けされた状態を改善するには、その条件付けの消去が必要です。
同じレスポンデント学習である「パブロフの犬の実験」の条件付けは、メトロノームの音(条件刺激)とエサ(無条件刺激)が組み合わされ繰り返し提示された後には、音を聞くだけで意識せずとも唾液の分泌(条件反応)が盛んになっている状態です。音だけで唾液分泌が盛んになる状態を改善させることを考えます。音は鳴らすが、エサは出さない刺激の提示を繰り返すと、徐々に唾液の分泌が低下し、音の刺激のみでは唾液分泌がされない条件付けが消去された状態になります。

列車に対する広場恐怖を考えますと、列車(元は中性の条件刺激)でパニック発作(無条件刺激)を繰り返し経験し、元々は不安の対象でなかった列車に実際に乗る、またはそれを考えるだけでも、パニック発作が起こるのでないかと予期不安(条件反応)が生じ、避けるようになった状態です。その条件付けを消去するには、列車に乗る際にパニック発作が起きない経験を繰り返します。そうすると予期不安は徐々に軽減され、列車での予期不安がなくなり、避ける行動も改善されます。理屈ではそのように説明できるのですが、実際には、列車に乗る際にパニック発作が起きるか起きないかを、エサを出すか出さないかのようにコントロールできない点が問題になります。

ここでは、取り組み方のヒントとして、ポイントを2つ示します。
1点目は、突然の予期しない「パニック発作」と、条件付けられ生じる「予期不安」が、症状的に不安や恐怖、動悸や息苦しさなど精神症状、身体症状とも同様で区別困難であることです。列車に乗る取り組みで生じる不安やドキドキは、症状は同じですが、突然の予期しないパニックでなく、条件付けられ生じる予期不安が発作的に高まったものと考えることができます。
2点目は、パニック発作も予期不安も、怖さや身体症状が生じる辛いものですが、永遠に増悪し続くものでなく、ある程度の時間でピークに達した後、何もしなくても自然に落ち着くことです。
これらは、条件付けを消去する行動療法の取り組みに役立ちます。

旅の写真4 舞鶴港からフェリーで日本海を北上

後半は、旅の写真です。

大学2年の夏休み、福岡に帰省した8月後半、大学に戻る際、どこかに寄り道しようと考えました。前年夏の初めての北海道に続き、比較的時間のある夏休み後半に再び船旅をして、北海道に行こうと決めました。
前年は茨城の大洗港から太平洋をフェリーで北進し苫小牧から北海道に入ったのですが、今回は、京都の舞鶴港から日本海を北進し小樽に入るフェリーを使うこととしました。
新日本海フェリーは、大型船で比較的安価であると聞いていました。現在と違い、インターネットで運航スケジュール確認や予約することはできない時代で、JTB時刻表の後ろの方に掲載されている長距離フェリーの航路スケジュールを確認し、舞鶴港のフェリー会社事務所に電話したところ、満席だがキャンセル待ちができるとのこと。23時過ぎの深夜の出発ですが、多分乗れるだろうと楽観的に考え、乗れずに深夜の港に残されることは考えず、福岡を朝「青春18きっぷ」で出発しました。
山陽本線、加古川線、福知山線、山陰本線、舞鶴線の普通列車を乗り継ぎ、東舞鶴駅から確か歩いて、深夜の舞鶴港に着きました。
キャンセル待ちで申し込み、出港間際に、乗船できることが案内され、学割で2等客室に乗り込みました。アルバムの中にフェリーの写真と共に、チケットが保存されていました。学割で5,280円、深夜23時30分に出港し、翌々日の早朝4時過ぎに小樽港に到着する28時間超の船旅となりました。2泊と丸1日、大型フェリーの中を散策、映画上映があったり、綱引きなどのイベントがあったり、太平洋ともオホーツク海とも違う青い日本海を眺めたり、夕焼けや夜の月を眺めたりして、気分良く、その後の予定も決めないまま、北に進み、小樽港に向かいました。

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