皆さん、口呼吸にご注意!(ケセラセラ2023年7月号 vol.113)
医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣
あなたはテレビを見ているときに、我知らず口を開けていることはありませんか?これはやめたほうが良いです。口呼吸は、虫歯・口臭・ふけ顔につながると言われています。また、口呼吸は歯並びを悪くするとか歯周病になると言う歯医者さんもいます。本来の呼吸は鼻を通して肺へ空気を届けることです。鼻は雑菌や空中のゴミを除外するフィルター作用を持ち、さらに適度な加湿もしている高性能な空気清浄機なのです。
さらに、最近の脳科学からの認知機能に関する研究を紹介しましょう。
研究の被験者は6つのよく知っている匂いと6つのなじみのない匂いを嗅ぐ、そして覚えておくよう指示されます。そして、1時間後にこれらの12種類の匂いを順不同に嗅ぎ、前にあった匂いかどうかを答えるという実験です。その結果、1時間鼻呼吸をしていた人のほうが口呼吸の人より覚えている数が有意に多かったことが示されました。この研究は、ノーベル賞を決めるスウェーデンのカロリンスカ研究所から発表されています (Arshamian et al., 2018)。この際、感覚の認識記憶は呼気時より吸気時に向上するということです。
また、てんかんの人の手術時に脳内から直接脳波を測定すると、口呼吸ではほとんど出なかった活動電位が、鼻呼吸では呼吸に合わせて記憶に関係が深い辺縁部に観察されるという研究もあります (Zelano et al., 2016)。
皆さん、口はいつもキリッとつぐんで賢い顔になっていてください。
(令和5年7月9日 貝谷久宣記)