パニック症と微小血管狭心症(ケセラセラ2024年3月号 vol.121)
医療法人和楽会 理事長 貝谷 久宣
長い間パニック症の治療をしている患者さんの中で薬をきちんと飲んでいるのに、まだ時々症状が出ると言う人はいませんでしょうか?そのような患者さんは、最近少しずつその本態が解明されてきた“微小血管狭心症”を考える必要があります。
微小血管狭心症が昔から知られているいわゆる冠動脈狭心症と異なる大きな点は、微小血管狭心症の字のごとく、心臓を栄養している血管の大きさが髪の毛ほどの小さなものという点です。それ故、従来の心臓の造影検査では検出することができませんでした。しかし、最近、検査技術が進んでこのような血管も造影できるようになりました。ですから、微小血管狭心症は最近明らかになってきた病気なのです。
では、いったい、微小血管狭心症ではどのような症状が見られるのでしょうか?冠動脈狭心症のようにみぞおちを中心とした短期間の胸部圧迫感ではなく、呼吸困難感、吐き気、胃痛などの消化器症状、背部痛や喉、耳の後部等への放散痛、動悸など些細な不定愁訴であることが多いと言われています。また、その持続時間も数分ではなく、数時間に及ぶこともあります。
微小血管狭心症にかかる患者さんの7割は女性であると言われています。特に更年期前後の女性に多く、女性ホルモンが病因に関係していることが推定されています。またこの病気の予後はそれほど恐ろしいことはあまりありません。この病気からすぐさま心筋梗塞や脳血管障害が起こる事は稀であると言われています。
微小血管狭心症では、心電図の変化は乏しく、普通の心臓カテーテル検査による冠動脈上でははっきり異常が見られないことが多いのです。そのようなことから微小血管狭心症は最新の検査によって診断されなければなりません。
治療においても、微小血管狭心症は普通の狭心症のように、必ずしも血管拡張薬ニトログリセリンが効果を発揮するわけではありません。この半年間に、赤坂クリニックの二人のパニック症患者さんに微小血管狭心症が見つかりました。適切な治療により二人とも元気になられております。
クリニックに来られている患者さんで、もしこのような疑いのある人は、ぜひとも主治医に相談していただいて、適切な検査ができる医療機関に紹介状を書いてもらうと良いでしょう。
出典