
ストレスケアの秘訣を一緒に考えましょう(その2)(ケセラセラ2025年5月号 vol.135)
医療法人和楽会 赤坂クリニック
院長 坂元薫
自分はストレスとは無縁な生活を送っているという人は、おそらく極めて少数派だと思います。コロナ禍を乗り越えてきたといえども、世間ではいろいろな事件が起き、収入は少しも変わらないのに物価ばかりが高騰し続けているなどとストレスは増すばかりだという人も少なくないのではないでしょうか。
私が日ごろ考え、そして実践しているストレスケアの方法を前回に続いてご紹介して、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
■「泣きなさい~、そして笑いなさい~」・・泣くことの効用も考えましょう
喜納昌吉さんの「花~すべてのひとのこころに花を~」をお聴きになったことがありますか。その二番は、「涙ながれてどこどこへ行くの♪・・・・泣きなさい~ 笑いなさい~♪」と唄われています。
前回は笑うことが心身に及ぼす効用について考え、日々の生活で積極的に笑うことをお勧めしましたが、今回は泣くこともお勧めしたいと思うのです。
私の数十年に及ぶ診療場面では何十万人という方々とお話をしてきましたが、私の前でさめざめと泣く方がいらっしゃいます。決して少なくありません。とりわけ女性の方はよく泣きます。
笑うだけでなく、泣くことも実はこころの健康によいのではないでしょうか。とりわけ、素晴らしい映画やドラマや音楽に感動して泣くことはメンタルヘルス維持の特効薬ではないかとさえ思います。「ボヘミアン・ラプソディー」のラスト21分のシーンで涙が止まらなかったという方はいらっしゃいませんか。私もそのひとりです。
また涙を流すことで自分の本当の気持ちや感情に気付き、素直に向き合うことが出来るのではないでしょうか。そういう本当の感情を抑圧せずに大切にすることが人生を少しでも豊かにしてくれるのかもしれません。泣いてすっきりしたとか、思い切り泣いたあとにはぐっすり眠れたという方も少なくないのではないでしょうか。泣くことで副交感神経優位となりリラックスできてストレス解消になるということも科学的に検証されつつあるようです。
ところで女性はさまざまな場面でよく泣きますが、小さいころから「人前では泣くものではない」と思い込まされてきた男性陣は少なくとも人前ではなかなか泣くことができません。平均寿命が男女で明らかに違うことは確かなのですが、そのいくつかある理由のひとつは、もしかしたらこの「泣くこと」にあるのかもしれないとまで思うのです。いかがでしょうか?