健康づくりのための睡眠ガイド(ケセラセラ2026年10月号 vol.152)
医療法人和楽会 横浜クリニック
院長 境洋二郎
悩まれている方の多い睡眠ついて、厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」における成人(働く世代・世代全般)向けの概要をご紹介します。
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」成人版の要点
本ガイドでは、心身の健康維持や疾患予防のために「睡眠の量(時間)」と「睡眠の質(睡眠休養感)」の両方を確保することが不可欠であると示されています。
1.適切な睡眠量の確保
・6時間以上の睡眠が目安
成人は最低でも6時間以上の睡眠時間を確保することが推奨されています。5時間未満などの極端な短時間睡眠は、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、うつ病などの発症リスクや死亡リスクを高めます。
・休日の「寝だめ」の問題点
平日の睡眠不足を補うために休日に長時間の寝だめをすると、体内時計が乱れてかえって健康リスクとなります。休日に長時間の睡眠が必要な場合は、平日の睡眠時間が不足しているサインであり、平日に十分な睡眠時間を確保できるよう、睡眠習慣を見直す必要があります。
2.睡眠の質(睡眠休養感)を高める習慣
・睡眠休養感が低いことによる健康へのリスク
睡眠休養感低下は、心筋梗塞、狭心症、心不全、肥満、糖尿病、脂質異常症など身体疾患、うつ病などの精神疾患との関連が示されています。
・関連要因、高めるために
睡眠休養感を低下させる要因としては、睡眠不足に加えて、仕事などによる日中のストレス、就寝直前の夕食や夜食、朝食抜きなどの食習慣の乱れ、運動不足、歩⾏速度の遅さなどの運動習慣の不良、そして糖尿病、高血圧、がん、うつ病などの慢性疾患を有することなどが報告されています。睡眠休養感を向上させるためには、生活習慣の見直しが重要になります。他にも、寝る前のリラクゼーションや寝室の快適さ、嗜好品のとり方などの睡眠環境や生活習慣も睡眠休養感に影響する要素です。
睡眠でしっかり休養がとれている感覚(睡眠休養感)を高めるため、生活習慣や環境の見直しが推奨されています。
3.良質な睡眠のための環境づくり
・日中にできるだけ日光を浴びると、体内時計が調節されて入眠しやすくなる。
・寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる。
・寝室は暑すぎず寒すぎない温度で、就寝の約1~2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
・できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠ることが良い睡眠につながる。
4.運動、食事等の生活習慣と睡眠
・適度な運動習慣を身につけることは、良質な睡眠の確保に役立つ。
・しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えると、体内時計が調整され睡眠・覚醒リズムが整う。
・就寝前にリラックスし、無理に寝ようとするのを避け、眠気が訪れてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
・規則正しい生活習慣により、日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつけることで睡眠の質が高まる。
5.睡眠と嗜好品
・カフェインの摂取量は1日400mg(コーヒーを700cc程度)を超えると、夜眠りにくくなる可能性がある。
・カフェインの夕方以降の摂取は、夜間の睡眠に影響しやすい。
・晩酌での深酒や、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)は、睡眠の質を悪化させる可能性がある。
・喫煙(紙巻きたばこ、加熱式たばこ等のニコチンを含むもの)は、睡眠の質を悪化させる可能性がある。
睡眠に関連する症状は、「睡眠環境、生活習慣、嗜好品」によるものと「睡眠障害」によるものがあります。睡眠環境や生活習慣、嗜好品に起因する睡眠関連症状は、上記にあげたような環境調整や生活習慣を整えることで改善する可能があります。それらを行っても、睡眠に関連する症状が続く場合、睡眠障害が潜んでいる可能性があり、医療機関の受診が勧められます。
